2011年8月10日水曜日

ロンドン ④ 南イングランド




そろそろ時差にも慣れてきて、連日歩き回って疲れた身体を癒すためではないが、友人のサイリルとメリッサの夫妻が、今日はぜひともロンドンだけでなく、イングランド南部の豊かな自然と歴史の建築を楽しんで欲しい!ということで、しっかり旅のしおりを用意してくれ、旅のルートも4パターンほど用意してくれた。

ブライトン、
カンタベリー、
ウィンザー城、
オックスフォード、
ウィンチェスター大聖堂、
ストーンヘンジ、
ソールズベリー、
バース、

それぞれのルートでこれという見所と、流石はイギリスの大学で建築を教えているだけある、とうなる様な渋いチョイスの組み合わせ。できるだけ自分が行ったことのあるところは避けつつも、一日を有効活用してできるだけ見れるようにということで、

ロンドン > ストーンヘンジ > ソールズベリー > バース > ロンドン

という、かなりの強行スケジュールが昨日より決定されていた。

日課になってきた朝のランニングで近くのお勧め建築を堪能した後、向かったロンドン南部に住む彼らの家は、まさに暴動によって焼かれてしまった本屋さんがある地区で、早朝に地下鉄の中で手にしたメトロにも、その記事が載っている。

このツアーのために、一日仕事を休んでくれたというメリッサと4人で、暴動の爪あと残るロンドンを抜け、喉かなイギリス南部の景色を見ながらひたすら南西へ。しかしこうして友人と時間を過ごす為に仕事を休んでくれると言うホスピタリティ。いつか彼らが訪れてきてくれたときには必ずこれ以上のホスピタリティで迎えないとと心に誓う。

ヨーロッパで広く普及しているカーナビは、防犯の為か取り外しが聞くもので、TOMTOMというブランドのものが有名らしく、昨日調べたリストより情報を入れては、「turn right in ahead」と非常に特徴的な声でナビしてくれる女性の声に耳を傾ける。

丘を越えると、水平線が見えるようなうねる草原の先に見えてくるのがストーンヘンジ。何百万年も昔に人がこの場所を選んで、どうにかして天と更新しようとしてなのか、もしくはなんらかのランドマークを立てようとしてなのか、とにかく何かの特別な力を感じてここに定めたということが理解できそうな風と空気が流れるような場所。

近く駐車場や関係施設を完全に地下に埋めて、石の周辺は本当に何も人工物が見えない様に変更する予定があるということを聞き、そうしたら完全に古代の人が見ていた風景と同じ風景がここ誕生するのかと流石に肌がザワザワするのを感じる。

ここは行ったほうが良いと言うので、厳しい時間の中TOMTOMに導かれて着いたのはウィルトン・ハウス

「ようこそ、僕らの家に!」

みたいな貴族の家だが、ここにもイゴニー・ジョーンズの影を発見する・・・・

何とか昼時に着いたソールズベリーでまずはランチを楽しみ、これぞゴシックというイギリスで一番高いと言われる尖塔をいただくソールズベリー大聖堂へ。その高さのために、全体をカメラの画面におさめるためにと、沢山の人が敷地ギリギリの端まで来て、しかも地面すれすれにしゃがむことでやっと全体をおさめることができる。

小さな町なので市内観光をさらっと終えると、「せっかくここまで来たのならもう一つだけ我がままを聞いてくれ!」と、ナッシュの心の師であったであろう、ジョン・ウッドを見つけにバースまで車を飛ばすことに。

建築の宿命として、空間を見る為には日の光が差している間にその場に到着しないといけないと言うのがあるのだが、片側一本道の田舎道。渋滞を回避すべくTOMTOMで再検索しては道を変え、また再検索しては元に戻る。みたいなことを繰り返しやっと辿り着いたバースはギリギリ夕日前。

大学院時代にあるシンポジウムのために、同級生の車に大きな男5人ではるばるやってきたのがこのバースだなと、その時も一緒だったサイリルとなんだか懐かしい話をしながら、「そんなのんきなことを言ってる場合ではない」と、まずは何と言ってもローマ浴場に向かう。

「その間に、グリムショーの浴場プロジェクトを探しておくよ」という、サイリルを残し、3人で中に。これぞ観光立国と納得するクオリティーと内容。しかも夜の10時まで開いていると言う。どこかの国もぜひ見習って欲しいものであると思いながら、チャッチャッと見物を終えて隣の本屋に行くと、ちゃっかりサイリルが待っていて、「これはお勧め」とジョン・ウッドがこの町の骨格を作ったときに一緒に働いていた人の日記の本を薦めてくるので、迷うことなく購入。

バース大聖堂をチラ見して、ここに来た最大の目的はジョン・ウッドの丸、四角、三日月なんだと、やたらと一方通行の多い、交通の便の悪いバースの市内を飛ばして、まずはサークルを見つけ、一番有名なロイヤル・クレセントに辿り着き、一番分かりにくいクィーン・スクェアに辿り着く。

ここまで来ると流石に日も落ちてしまって、他の三人は車からも出てこなくなってしまったが、一人やっと辿り着いたウッドの作った街の痕跡に感動し、何度も何度も歩き回る。

クタクタになっても最後まで車の運転をしてくれるサイリルと、歩き回って疲れ切って寝入ってしまった女性人二人。窓の外では流れていくイギリス南部の風景を眺めながら思いを馳せる。

外国人でも東大寺や清水寺には足を運ぶ人は多いが、久遠寺や永平寺まで行くどころか、その空間的素晴らしさを知っている人すら少ないのと同じように、これだけグローバル化が叫ばれても、生まれ育つ国はやはり一つであり、身体の中に染み込む建築空間の歴史も一つであるのならば、なかなか体系立てて別の国の歴史的空間を学ぶことは難しい。せめてその表層的な「流れ」だけを理解するに留まることが多い。

それをこうして、この国に住む同じ思いを持って建築を学んだ友人にガイドしてもらい、歴史的背景に対する知識を持ちながら冷静にその建築物を見る機会があるということは、本当に素晴らしい経験なんだと改めて思いながら、そういう自分もウツラウツラと眠りに落ちる。

眼が覚めるとロンドン中心部に戻ってきていて、何百万年の時間を越えていきなり文明の中に投げ出されたかのような外のネオンたち。

ロンドンでどうしても妻を連れて行きたかった思い出のレストラン・ワンケイ。世界で一番接客態度が悪いと有名だが、5パウンドくらいでとにかく腹いっぱいの学生飯が食べれると言うことで、学生時代によくみんなで通ったり、仕事をしだしてはたまに年下の友人達に「たまには奢ってやるから腹いっぱい食べろ!」とワンケイに行って「ワンケイかよー」と愚痴られていた懐かしいお店。

しかし商売っ気が無いので閉店時間も中華街で圧倒的に早い為に、長い長い一日の最後に辿り着くには遅すぎて、「楽しみは次回に持ち越し」ということで、近くの別のレストランで、懐かしいメニューに舌鼓を打ちながら明日からの北欧の地に思いを馳せる。




























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