2011年6月2日木曜日

じゅらくでドン

建築の現場というところにいくと、なかなか面白い言葉に出会うことになる。

例えば、「ツライチ」。

それぞれに厚みの違う建材同士と貼り合わせる場合に、そこに段差をつけずにフラットに仕上げる状態をいい、段差がない分見栄えもよろしく、どこかの若手芸人のような調子のよい語感と合わせて、結構お客さんに好評な言葉である。

「知らないと恥をかく現場用語のすべて」なんて感じで、一冊本が出てしまうくらい多種な言葉があり、知ってるからなんだんだ・・・と逆に思わないでもないが、とにかくふと思うと結構面白い言葉が多いのは確かだと思う。

和室の仕上げでよく見られるじゅらくなどの土壁は京都風の和室に仕上げる塗り壁材のこと。元は秀吉が京都の西本願寺付近に作った聚楽第の池の色に似た色の塗り壁で、日本庭園の深い緑色をした塗り壁が語源だとか、その聚楽第の跡地の土を使った塗り壁だとか言われる、いわば京風和室と共に日本全国に上質な和室の壁の呼び名である。

扱いのとても難しいじゅらく壁が、襖などの建具と絡む部分に枠などで見切りをつけずに、そのままぶつけて仕上げて欲しい、という内容を現場監督さんが建具屋さんに、「難しいのはわかるけど、あの建築家の先生がそう言っているので、なんとかやってくれないかな・・・」みたいなニュアンスを醸し出しながらの「じゅらくでドン」。

「ドンか・・・」と建具屋さん。
「ドンです」と現場監督と建築家。
そして、みんなで苦笑い。

そんな現場で生まれるものは、やはり手の痕跡を内包した上質の空間。

きっと良い住宅になるだろうと確信できる瞬間でもある。

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