2011年3月11日金曜日

「大地と自由」 ケン・ローチ 1995 ★★★★★


















「敗者のない戦いに参加しよう。たとえ死が訪れてもその行いは永遠なり」

Come, join in the only battle wherein no man can fail,
Where whoso fadeth and dieth, yet his deed shall still prevail.

by ウィリアム・モリス William Morris

70年前、自由と平等を信じ、国を超えてまでし集い戦いながらも、自由という概念が有する自己矛盾の為に、大将率いる組織の前に敗れたものの、最後まで信念を貫いた人々。

そして今、中東では、自由を信じる個がネットという冗長性を持ったシステムによって自己矛盾を超えた群としての組織になることによって、今度は大佐を追い詰めている。

スペインで起こった人民戦線とファシストとの戦い。ファシズムへの対抗心と、自由を求める信念によって突き動かされ、密入国の末スペインにたどり着き、POUM(マルクス主義統一労働者党)系民兵隊に合流するイギリス人青年。重度のクィーンズ・イングリッシュ。

劇中で交わされる激しい議論は、個人が自らの信念を持って、国を世界を良い方向に進めると信じていた姿に他ならない。

解放された村で行われる、村民総出での土地の共有化をテーマとした議論。持てる者と持てない者、そして第三者としての民兵隊。どんなに拙くても、それぞれがそれぞれに必死に何が善い方法かを考え、言葉を重ねる。

繰り返しライトをあてられる自由と平等。

普段着で銃を構え、買い物帰りのおばちゃんの通る横で手榴弾を投げ合う、日常のすぐ隣の戦い。その10年後経たないうちに原子爆弾が落とされることを考えると、ものすごい時間的加速度を感じずにいられない。

悩み、迷い、傷つけあいながらも、理想を信じ、まっすぐに進んだ末に敗れたとしても、その人生は決して空しいものではないのだろう。突然の死の後にその形見から祖父がスペイン内乱に身を投じた義勇兵であり、妻との手紙のやり取りから、どんな時間を過ごしたかを知る孫娘。葬儀の最後に、ウィリアム・モリスの詩とともに、殺し合いの中でも当たり前のように、人を愛し、愛した人が戦場に倒れ、見送った祖父の思い出のスカーフと砂を一緒に埋葬するシーンに投影する。

何度でも繰り返される、人間の歴史を語る映画。

革命は国のその後を信頼して任せる人に正しく政権を移譲する移行期の現象であるべきだが、願わくは大佐の後に未来の大佐が居座るのではなく、革命を推し進めた人々が安心できる理想を持つ人物が現れることを期待する。

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キャスト:イシアル・ボリャン、イアン・ハート、ロサナ・パストール、トム・ギルロイ、マーク・マルティネス、フレデリック・ピエロ

原題:Land and Freedom
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