2010年12月2日木曜日

人生の透過性

早4年目となる、早稲田芸術学校での卒業設計の指導。

学生生活の最後を締めくくるべく、自らの選んだテーマに沿って、自らの選んだ敷地に建築を計画する。選ばれてくる敷地を見ていくと、自分の生まれ育った地か、現在生活を営んでいる地のどちらかという、大きな二つの流れがあり、そこに込められた各人の過ごしてきた時間への思い入れ。自らの生活があるからこそ、見えてくる問題点や、やりたいこと。そんな思いを聞きながら、この時期はグーグル・マップでの日本旅行に連れて行ってもらえる気分に浸れる。

渋谷、銀座、品川、乃木坂といった都心から、、芹が谷の様な郊外、鯖江、佐伯の地方都市、中野ブロードウェイ、竪穴抗といった個別の建築物まで、各学生の身体を通した視点で様々な街を歩き回り、彼らが過ごした時間の中で見てきた風景を思うと、卒業設計というテーマと敷地が既に、各個人の人生を透過させる一つの結晶体のように感じずにいられない。

自分とは違った視線を持ちながら、知らない街を歩ける時間に感謝しながら、社会性だとか、何を作るべきかとか頭を悩ませる学生に少しでもヒントを与えられるように、こちらも同じく頭を悩ませる。

一枚の絵でも模型でも図面でも、自分の人生の透過性を結実させ、世界中どこにいっても自信を持って、自分は建築を志し、こんなモノをつくるんだと、胸を張って言えるような、そんな作品に導けるように今日もまた、彼らの眼を借りて空想の中で街を歩く。

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