2006年6月16日金曜日

鬼が来た


「鬼が来た」という映画がある。2000年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作である。

日中戦争中下の中国の農村を舞台に、ある夜軒先に置かれた袋に入った日本兵を預かることになった農民を中心に、戦争という非日常という中であくまでも個人を描き、それでも最後は国と国民という枠に還元されてしまうという、中国発の名作映画である。

今、「鬼」のいる国がある。しかもその鬼は今年二十歳になったばかり。

その国とはイギリス。
ルーニーのいる国。

奴と対峙することになったディフェンダーの恐怖は想像するに難くない。なんせ、かの国のフォワードならとっくに倒れのた打ち回るようなタックルを食らわしても、ヒョードル並みの腰周りで苦にもせず、万一倒れてもファウルなど期待せず直に起き上がりさらにボールを追う。

奴にボールを触らせる恐怖の余り、ディフェンダー達は数人がかりで行く手を阻むが、扉をこじ開け、乗り越えてでも先に進もうとする。明らかなファールが審判に取られないときは、プレデターの様な形相で雄たけびを上げる。目をあわせたら食われそう。

数年前、自分が鬼の国に住んでいた頃、彼はまだ餓鬼というレベルで、十代でありながら顔と態度は三十代の印象だったが、かつてのライバル・チームに移籍し、名将の下で過ごした二年ですっかり餓(我)が取れたようだ。

画面を通しても聞こえてくるような大声でボールを呼び、けが人が出たのかと思うほど両手を掲げてボールをよこせと指示をする。そして華麗なフリーキックを決めた主将に満面の笑顔でその豊満な身体をゆらし飛びついていく。

「俺、俺」詐欺はかなりの決定率だったらしいが、フィールドの上で殺気を放ちながら両手を挙げ、「俺、俺」と叫ぶ鬼がかの国に出現するのはいつの事になるのだろう。

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