2013年1月9日水曜日

HR

構造改革にともなって、できる限り組織の効率化を考えることになる。

人事・経理・営業・PR・設計・総務等々、設計事務所が会社という不特定多数の人が集まり、業務をこなしていく場である以上、組織を円滑に運営していくべき必要な環境を整えたほうが、より毎日の仕事がスムースに進むというのはしごく常識的なことであり、数人という個人事業主的な形態から10人を超え、30人を超えていくに連れ、「自分達で全部やる」ということが通用しなく、「組織」としての在り方に変容していかなければならない時がやってくる。

という訳で、我々MADも現在に至るまでに何度も事務所内の構造改革を行ったのだが、今年もまたそれが必要な時期だろうということで、会社を成り立たせるそれぞれの分野において現状分析と仕分け、そしてどうすればより良くできるかを検討する。

設計事務所を成り立たせる設計業務。
その活動を外の社会に向けて発信するPR業務。
自分達の作品がどのような場所に行けばより良いマッチアップが可能になるか、世界の様々な場所で行われるコンペ情報を精査したり、どのようなメディア戦略をもってオフィスの作品を発表していくか、そんなことを行うPRとは別の営業業務。
パソコンが必須となった現代の設計業務なだけに、複雑化するデジタル環境のアップデートや、テラをあっというまに超えていくまで増えていくデータの管理などを行うIT業務。
日常経理や、年間の経費の管理を行う経理業務。
クライアントとの窓口になったり、日常的な業務の雑多なことがらをカバーしたり、外国人スタッフのビザの発給手続き、保険のやり取りなどの総務業務。
そして組織の心臓部とも言える人事業務、つまりHR(Human resource)。

流動する世界を反映するように、現在までに在籍したスタッフとインターンの総数は既に数百を超える。人がいて初めて成り立つのが会社組織なわけで、彼らの存在がなによりもの宝であり、展覧会や出版物などでプロジェクトを発表するときには、必ず担当チームに属した彼らの名前は記してあげたいというのがオフィスの誠意でもある。

しかし、「建築家」という全うな社会からはやや距離を置き、会社という「しっかり」した組織に属することなく、漂うように生きてきた建築家にそれだけで一つの専門領域とも言える人事の仕事の経験がある訳も無く、誰もが独立という時点から自分なり、自分たちなりの会社組織の在り方、そしてHRの在り方を模索していくこととなる。

引き継ぐべきこともなければ、模倣する対象もなく、教えを乞う上司もいないところから出発するので、ひたすら原理原則へと回帰し、自分でどういうことが必要か、何が出来たら会社として良いのか、現状の分析から改善点などを考えることとなる。

考えうる様々なシナリオを考えては、どのようなシステムが適しているかを検証する。何年後でもそのシステムが成立するために、よりシンプルで、よりフレキシブルで、より原則的であるように。何年の何月の時点で、あるプロジェクトに関わっていたある国のスタッフを知るためには、一元的なタグシステムでは成り立たず、ある種のパラメトリック・デザインの要素が必要になる。

そんなことを繰り返し、書き出した20にものぼる検討事項やシナリオと、その対策を踏まえるて導く第一の結論から、手持ちのソフトやウェブベースのシステムでは対応できないとなり、ならばと市場に出回るHRソフトを検索する。基本言語が英語と中国語ということもあり、日本市場のものでは需要にマッチせず、英語ベースのソフト検索をして、最終的にはスタッフとプロジェクトの管理にも使えるHRソフトの購入とその業務だけを専門的に行うスタッフの確保の二つが急務だという結論に達する。

その結論を他のパートナーに伝達し、オフィスのマネージャー・スタッフに伝えて手配をお願いする。そこに費やされた半日以上の時間と労力。

「建築家の仕事って一体何をしているの?」

とよく聞かれることがあるが、これもまた「建築家の仕事」の一つなんだと自分を納得し、またトレーシング・ペーパーに向かうことにする。

2013年1月7日月曜日

人日の節句


正月らしさの無い北京の新年。

それでもしっかりと、地球が太陽の周りを回転しているということが理解できるように、寒さも一段落し確実に次の季節に向かっていると思える一年最初の節句の日。

この国では古来より、正月の1日を鶏の日、2日を狗(犬)の日、3日を猪(豚)の日、4日を羊の日、5日を牛の日、6日を馬の日とし、それぞれの日にはその動物を殺さないようにし、7日目を人の日(人日)とし、犯罪者に対する刑罰は行わないことにしていたという。

また、この日には7種類の野菜(七草)を入れた羹(あつもの)を食べる習慣があり、これが日本に伝わって七種粥となり、平安時代から始められ、江戸時代より一般に定着する。江戸幕府の公式行事となり、将軍以下全ての武士が七種粥を食べて人日の節句を祝ったそうだ。

また、この日は新年になって初めて爪を切る日ともされ、七種を浸した水に爪をつけて、柔かくしてから切ると、その年は風邪をひかないと言われているそうだが、我慢できずに5日に切ってしまった足の親指の深爪具合を眺める。

兎にも角にも、一年の豊作と無病息災を願いながら、七草粥を食べる日

風物詩として店頭にならぶ日本の七草は手に入らないが、それでもそれに近しい野菜をいれて作ったもらった粥を平らげ、今年一年に思いを馳せる。


「Sea Rex: Journey to a Prehistoric World」2011 ★★



何でこんなにも魅かれるのか分からないが、男性にとって恐竜というのは小さいころに脳に植えつけられた未知の世界のシンボルと言ったロマンティックな意味をもつのだろう。

「The Dinosaur Project」を見たからという訳ではないが、たまたま見つけたデジタル・ドキュメンタリー映画。ディスカバリーチャンネルなどでいかにもありそうな、現代のCG技術を駆使して、かつて地球上を闊歩した恐竜世界の実写的再現かと期待してみてみることに。

恐竜が死滅した4500万年より以前の世界で、恐竜が存在した時間を三畳紀、ジュラ紀、白亜紀と呼ぶが、その気の遠くなるような長い時間に存在し、それぞれ異なった時代に地球を支配した主要な恐竜を、相当精密なコンピューター・グラフィックで再現して紹介していくのだが、それを海の中、海中恐竜に焦点を当てた一作。

恐竜の名前やTriassicが三畳紀など、実生活でお目にかかることのない英語ばかりで、相当理解に苦しむが、それでもやっと人類の目の前に姿を現したダイオウイカなんて比にならないくらいの巨大スケールの恐竜達。弱肉強食の世界で繰り広げられた長き文明以前の世界が、パンゲアから徐々に離れた大陸として地球上に場をつくっていくマントルの活動と平行して繰り広げられていたと想像すると、どうにもこうにも心の高揚が止まらなくなるから不思議である。

こういう映像を見るたびに、恐竜を刈りにいくゲームが流行るのも無理はないかと思わずにいられない。

How was music?

オフィスについて、コーヒーでも入れようと給湯室に向かっていると、あるスタッフが声をかけてくる。

「How was Music?」

軽く陥るパニック。

「どうして、昨日早く抜け出して向かった先がオペラ・ハウスで、コンサートを聴いてきたと知っているんだ???」

「後ろめたさからか、抜け出る前にあるスタッフにこれからコンサートだと言ったのが伝わったのか???」

「どうして???」

などと「ダウト」はひたすら頭の中で広がりながら、「いやー、良かったよ。いい音響だったしね。」なんていいながら、「ところで、何で知ってるの?」と切り出すと、

「実は自分たち(コロンビアからの男性スタッフと、オランダからの女性スタッフの二名)も、昨晩コンサートを聴きに行っていたんだ。」と言う。

「誰か知ってる顔はいないかな?と思ってみていたら、洋介の奥さんの顔が見れたので、横を見たら知ってる顔だってね」と。

なるほど、と何故だかほっとし、その代わりに同じ時間を過ごしたもの同士であーだこーだとオーケストラについての感想など、スタッフとしてではなく同じもの好きな人間としての「会話」をし、年間スケジュールのサイトなどを教えてもらう。

土日も関係なく、ほとんどオフィスに出っ放しだと思っていたその二人が、このようにひょんな形で自分の時間を楽しんで、それが少しだけオーバーラップしていた事実を知って、これこそ文化都市の魅力なんだと深く納得しながらコーヒーをすする。

2013年1月6日日曜日

プラハ・フィルハーモニー ★★★


中学時代は自分があまりに音痴過ぎるたので、冬の音楽発表会では指揮者の位置が定位置だったと思い出す、新年初めてのコンサート。

未だに論争の続く、「不可聴音域」の問題。レコードなどのアナログ盤からCDというデジタル音源へと移行する際に、人には聴くことができないと言われている50Hz以下と、20000Hz以上の音をカットした問題。

自分なんかにはその違いは良く分からないが、音楽好き友人によればやはりCD音源はLP類には叶わなく、「音の奥行きが違う」らしい。

アナログレコードの音を

これもよく言われているが、最近ではその「聴けない」といわれてきた高音域の音楽を聴くと、人間の脳はアルファ波を出すという。そう、あの気持ちの良い状態に出るという波長である。

そんなことは理解しながらも、それでもやはり「便利」だということで、日常ではデジタル音源に浸る現代人。そんな常に緊張を強いられる身体に、低音から高温まで「不可聴音域」も含めてすべての音域を浴びせつける「生」の音楽。オーケストラ。

それを国家の威信を懸けて作り上げた、21世紀の大国:中国の首都に位置する国家オペラハウスという、音の建築でじっくり堪能する年初め。

妻の語学学校の友人で、考古学者だというスコットランド人の旦那さんと、医者をされている日本人の奥さんの夫婦に誘われて、プラハ・フィルハーモニーの新年一発目のコンサートを聴きにオペラハウス(NCPA 国家大剧院)に足を運ぶ。

中国では年末年始が休みになるが、その分のしわ寄せが次の週末に来るので、4日から8連勤となり日曜日も通常営業なのでなかなか抜け出すのに時間がかかるが、思い切って待ち合わせ時間に合わせて地下鉄に乗りながら、一体どういう人がこういう時間に余裕を持って仕事を切り上げられるのだろうか・・・と、建築家という職業の宿命に想いを馳せる。

最寄り駅の地下鉄構内でばったり妻と鉢合わせ、簡単な腹ごしらえをしてホールに向かうと、またまたバッタリと友人夫婦に鉢合わせる。年末にも音楽を聴きに来たという音楽好き夫婦だけあって、今日のオーケストラへの期待も上々な様で、とても楽しそうな雰囲気。

180元と一番値打ちな席だけあって、オーケストラの後ろという席からは、各演奏者が楽譜を捲る様子なども見れてなかなか面白い。現在、ハルビンでオペラハウスを設計している手前、数ヶ月前にこのホールの設計と音響を参考にしに足を運んだので、その効果を実際にオーケストラで体験する良い機会でもある。

19:30に時間通りに開演したプラハ・オーケストラはOndrej Vrabecという若きチェコ人指揮者に率いられ、ちょっとでっぷりした彼の表現力豊かで、動きの大きな指揮に導かれ、とてもダイナミックな演奏を奏で、期待していた以上の良さであった。そのおかげで、久々の刺激に脳も驚いたのか、すっかりアルファ波が出てしまい途中はすっかりウトウトしてしまう。

幕間にホワイエで友人と談笑をしていると、見知った顔だと見つけるのはURBANUSのワン・フイ(Wang Hui)。こちら中国を代表する有名建築家なのだが、パートナーのマーとも昔から知り合いということもあり、ザハ事務所で北京に送られた9年前からの知り合いで、いろんな建築関係のイベントでもちょくちょく会う関係。

相当なクラシック好きなようで、「これはいい仲間を見つけた!」と言わんばかりに、

「あれ、音楽好きなの?
こちらは奥さん?
こちらは友達?
そうそう、ここに来るなら年間のVIPカード買った方がお得だよ。
2月にシカゴ・オーケストラ来るよ!高いけど絶対いいよ。
4月にはムティが・・・・」

と、とても嬉しい情報を次から次へと話してくれるので、トイレに行く間もなく休憩時間の終了。

アンコールも盛り上がり、終了したのは10時というたっぷりの内容。席の場所でちょっと心配したが、音響的にも素晴らしく、演奏もパフォーマンスも素晴らしく、とても満足の行く内容だったということは、すっかり軽くなった身体の方がよく示してくれているようである。

4人で記念撮影をし、次はどれにしようか?などといいながら、地下鉄に乗り込む「初聴き」。

「数年後には、MADが設計したオペラハウスで一緒にオーケストラを聴きましょう」と約束し、やはり「手」の痕跡に勝るものは無いんだと想いながら家路に就く。

国立オペラハウスの年間カレンダー






2013年1月5日土曜日

構造改革

パートナーと今年の一年について話をする。

今年は竣工を向かえるプロジェクトは一つも無く、その代わりに現場が始まるプロジェクトがいくつかあるので、

オフィスも9年目に入り、世界で活躍する他のオフィスを参考にして、自分達で改善できるところはどこかを探す。

オフィスの構造改革。

我々3人のパートナーと、デザインや実務など得意分野に責任を持ってもらうスタッフ。彼らを専門的にサポートするチーム。プロジェクトをいくつか掛け持ってマネージメントするマネージャーとしてのスタッフと、その下でプロジェクト・アーキテクトとしてチームを纏めるスタッフ。プロジェクトを発展させていくプロジェクト・チームとそのサポートをしてくれるアドミニのスタッフ。そしてインターンのメンバー。

限られて毎日の時間を過ごす職場。ここに残ろうと思えるような環境にすることと、その為にできるだけ効率的に仕事が進み、クライアントにも満足してもらえ、スタッフにも達成感やここで働く喜びを与えられるような場を作ることが、オフィスとしての成長の何よりの課題。

口だけの「仕分け」ではなく、本気で自ら脱皮するための「仕分け」。

異なる文化圏と異なる考え方を持つ国から来ているスタッフの多くは、コロンビアやイェールといった、建築業界でトップと言ってよいような教育のバックグランドを持つ人材ばかりである。

そんな一人一人の良さを引き出し、チームとして科学反応を起こさせ、一つの有機体としてオフィスが毎日活動することを目指し、毎日の時間を過ごすことにする。

2013年1月3日木曜日

「バイオハザードV リトリビューション」ポール・W・S・アンダーソン 2012 ★



ゲームが発売するために、これといった新しきアイデアも無いのにとにかく人気シリーズだというので映画化しないといけないのも大変だと理解させてくれる一作。

シリーズ5作目でも目新しいことを描き続けるのは、トップのクリエイターにとっても至難の業だと痛感し、改めてエイリアンシリーズの凄さを思い知る。
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スタッフ
監督 ポール・W・S・アンダーソン
製作 ジェレミー・ボルト

キャスト
ミラ・ジョボビッチ   アリス
ミシェル・ロドリゲス   レイン
アリアーナ・エンジニア    ベッキー
ケビン・デュランド    バリー
シエンナ・ギロリージル・バレンタイン
作品データ
原題 Resident Evil: Retribution
製作年 2012年
製作国 アメリカ
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