2021年9月8日水曜日

Casa Luis Barragan ルイス・バラガン邸_Luis Barragan ルイス・バラガン_1948 ★★★★

 


Luis Barragan ルイス・バラガン

住宅、住宅、住宅と記憶の引き出しを探っていると、蘇ってくるのは一場面の心地よさや、そこに初めて身体を滑り込ました時の印象、そしてそこで過ごされた時間の長さを感じさせるような使い込まれた家具達の佇まい。そんな風に頭に浮かんでくるいくつかの場面がどの住宅だったかなと指をひっかけるようにしてたどっていく作業はなかなか心を軽やかにしてくれる。
 
そんな訳で次に指が引っかかったのはメキシコの強い日差しを受けるバラガン邸。入り口を入ってすぐの階段室は何のための空間かと言い表すことができないような曖昧さを持ちながらも、なんとも言えない心地よさを感じさせる。

そしてメインの空間に入る前にぐっと天井高を抑えられた空間を抜けることで、縦にも横にも空間の強弱がつけられて、そしてバッと開けた空間に大きく設けられた十字のサッシをもつ大開口からの自然光へと注意が向けられる。

入り口からここまでの空間構成で十分に感動的なのだが、面白いのは庭に向けられたリビングルームの空間と道路側に設けられた書斎側は吹き抜けで一体となっているのだが、空間の真ん中に立つ人の背の高さくらいの壁にて視線は遮られつつも、気配は感じられる柔らかなつながりを持つ。

そして道路側の書斎では壁の上側に設けられた窓により、外からの視線は遮りつつ日の光を取り入れ、庭に向けたリビングでは床から天井までの大開口で庭との一体感を作り出す巧みな断面構成。そして壁から持ち出しの細い階段が二階の書斎と繋いでくれて、住宅の中に動線の輪を作り出す。

隣接する部分は主にオフィスとして使用されていたために、メインの住居側は決して広くはないのだが、それでもすべての空間がそれぞれに異なっていて、住宅の中をめぐると様々な空間に出会うことできる。これはジェフリー・バワのナンバー11でも同様に、家の中に様々な場所が存在し、廊下が移動のための空間としてではなく、それ自体も空間として魅力的な場となっている。それが一日を過ごし、生活と仕事を行う場として建築家が長い年月かけて辿り着く答えなのかと納得する。

一通り平面を描いて、今度は写真と照らし合わせながら、各空間の壁につけられた色を塗っていく。バラガンが使ったのはメキシコの自然に関する8色(ピンク ・赤錆 ・黄土 ・赤  ・黄色 ・青 ・白 ・薄紫)と言われるが、建築自体に塗装された壁面と、それに呼応するように、カーペットや絵画などで配置された色を見ていくと、徐々にバラガンが求めていた建築の形が見えてくる。

空間の凹凸と、そこに様々な角度から取り込まれる光とそれが作り出す影、そして色。家具や階段に使用される木の素材感と色と、そして室外には木々の鮮やかな緑と池に流れる水の音。そんな鮮やかな色の世界を追っていくと、その背景はやはり強いメキシコの日差しと、乾燥した大地の姿が感じられ、これはメキシコの建築なのだなと納得する。





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