2016年3月5日土曜日

「ジャージの二人」 中村義洋 2008 ★★

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スタッフ
監督 中村義洋
脚本 中村義洋
原作 長嶋有『ジャージの二人』
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キャスト
息子:堺雅人
父親:鮎川誠(シーナ&ザ・ロケッツ)
息子の妻:水野美紀
花ちゃん:田中あさみ
岡田:ダンカン
遠山さん:大楠道代
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夫婦の間で問題があり、会社も辞めたばかりの息子が、グラビアカメラマンの父に連れられて、避暑地の軽井沢にある古い山荘で数日過ごす夏休みの様子を描いた物語。どうやらこの山荘は、父親の実家であり、かつ子供が小さいときからこの山荘に夏休みの度に来ていたようで、周囲の住民とも顔なじみの様子である。

富士山も眺めることのでき、キャベツ畑の広がる広大な自然の中、なぜかダンボールの中から取り出されたのは、この地域の様々な小学校のジャージ。この山荘にいる間はジャージで過ごさなければいけない家族のルールがあるのか、二人は何の疑問も無く色鮮やかなジャージで毎日を過ごすことになる。

ロケは嬬恋など北軽井沢周辺で行われたというが、周囲はほとんど緑色という環境の中、二人のジャージの姿がとても印象的な画になっている。父と息子、夏休みでやってきた娘に息子の奥さん。そして近所のおばさんとおじさんと、主要登場人物は非常に少ないにも関わらず、閉塞感も無く、広大な風景そのもの、ゆったりとしたテンポで物語りは進んでいく。

テレビゲームに勤しむ父に、できるだけ映画を観ようとレンタルビデオ店に通う娘。そして小説を書こうとするがなかなか書き進めない息子など、それぞれが自分の時間をすごす対象を持っていながら、互いの距離感は離れすぎないと、なんとも仲の良い家族の関係を描き出す。

携帯の電波が届きにくい場所で、キャベツ畑の一箇所だけ電波が3本も入る穴場があり、そこに行っては手を掲げ、受信するメールの音が流れるというシーンは、ネットワークから外れることができない現代人と、ネットワークから外れることはすなわちドロップアウトすることだという脅迫概念に追われながら生きている我々にとって、なんとも象徴的なシーンである。

主演の一人である父親役の鮎川誠についてはまったく知らなかったが、息子たちと絶妙な距離感をとりながら、子供のようでありながら父親をこなしている役にぴったりなキャスティング。同時に、やはりこういうのほほんとした映画には堺雅人はよく合うなと納得してしまう一作である。








中村義洋

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