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所在地 兵庫県西宮市大社町
主祭神 天照大神荒魂(あまてらすおおみかみあらみたま)
社格 式内社(名神大),二十二社(下八社),旧官幣大社
本殿の様式 神明造
創建 (伝)神功皇后2年
機能 寺社
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兵庫を横断し、できるだけ重要な場所を巡ろうと調べて見ると、改めてその大きさを理解する。東は大阪に面してかつての摂津国の範囲となり、西は岡山に面する赤穂市など、北には日本海まで広がり京都と鳥取に面し、南は瀬戸内海に広がり四国へと繋がる淡路島。
どう画策しても一日やそこらでは回れるはずも無く、今回は瀬戸内海に面した山陽道沿いをメインに巡ることに決め、折角だからと東の西宮、芦屋から始め、西に向けて神戸、明石、加古川、小野と巡り途中淡路に飛んで、最後は姫路と兵庫南部を横断するルートを採用する。
そんな訳で昨晩の宿泊地の有馬温泉のある六甲山から坂道を下り最初の目的地に選んだ西宮市の廣田神社(広田神社、ひろたじんじゃ)に到着したのはまだ朝日が昇ったばかりの7時台。西宮と言えば、甲子園や正月の「福男」を決定する西宮神社などのイメージが強いが、神戸、姫路に次いで兵庫第三の規模を持つ都市という。
そんな西宮に位置するこの廣田神社は、二十二社(にじゅうにしゃ)の下八社に数えられる由緒正しき寺社。「二十二社?」とならない様に、下記のリンクで社格の復習。
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■二十二社(平安時代)
・朝廷奉幣のために11世紀初頭に定められた
・祈雨・祈晴や国家的大事に際しては特別に奉幣の対象になり、「二十二社」という名で特別な社格の神社として、他の神社よりも優越の地位を占めた
・上七社(伊勢、石清水、賀茂、松尾、平野、稲荷、春日)
・中七社(大原野、大神、石上、大和、廣瀬、龍田、住吉)
・下八社(日吉、梅宮、吉田、廣田、八坂、北野、丹生、貴布禰)
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平安時代ということで、都のあった京都からある程度の距離内にある神社で占められており、ほとんどが山城・大和(やまと)・河内(かわち)・和泉(いずみ)・摂津の五か国
で構成される畿内に位置していることになる。
西に広がる山陽道から畿内に入り、やっと京に入っていく西の要である摂津国。そこにいつするこの廣田神社は京から西にむかう重要な街道上にあるために、「西宮(にしのみや)」と呼ばれることになり、この一体をさすことになる。「福男」で有名な戎さんの西宮神社は元々はこの廣田神社の摂社であったという。そこからもこの廣田神社が長い歴史の中でいかに重要な場所であったかを物語る。
六甲の裾野に広がる昔ながらの住宅地ということで、神社に近づくにつれて徐々に狭くなる道幅からも感じられる。少々幹線道路から少し脇にそれ、一の鳥居がすぐ見える場所に、その先に駐車場があることもすぐに認識でき、ありがちな境内の周りをぐるぐる迷いながら回ることなく駐車場に車を停めることができ、非常に気持ちのよい一日のスタートを切ることができる。
一の鳥居をくぐり、数段のゆったりとした段差をあがると程よく手入れがされた森の中に入っていく。ここは廣田神社の社叢も含める広大な敷地を持つ広田山公園として住民に愛されている様子が読み感じられるように、境内には
「清々しい気持ちで参拝していただくために神聖な境内で犬の散歩はご遠慮下さい」
という社務所からのお願い看板を見かけたり、これから登校なのか、地元の中学生といった体の子供たちが公園の中を数人で歩いている姿や、地元住民が朝の散歩がてらにお参りに来ている姿を見かけたりと、この地の日常の風景として溶け込んでいる様子が感じられる非常に心地よい景色が開けている。
そんな参道を進むと、ポッと空間が開けて右のほうに拝殿が地形に沿うようにして更に数段立ち上がった場所に姿を見せる。伊勢神宮などと同じ神明造(しんめいづくり)の拝殿はその上には緑色の緑青が生成した周囲の自然に溶け込むような美しい銅葺き屋根が他の形式の様に流れるような軒線ではなく、平入りの特徴を活かし緊張感のある水平線を風景の中に浮かべている。
それもその両端が手前の木々の枝に隠れて見えないというなんとも奇跡的な演出を見せている。神明造という伊勢神宮と同じく切妻屋根に対して妻側ではなく平入りすることで、勾配屋根の大きな面を正面に向け、その突き出た庇の下に陰で暗くなる空間が屋根の投影面積に比べ低くなることから、アプローチする人の視界の中で重要な位置を占めるのはやはりこの斜めの屋根面。
そしてその屋根面を覆うのは、今度は明治神宮と同じく、銅版を丁寧に葺いた平葺き屋根。銅版だけに当初は赤橙色をしているが、大気に晒され酸化することで徐々に暗褐色となり、その後緑色をした緑青(ろくしょう)が作成されてよく目にする緑色をした屋根が作られる。自然にこのプロセスを経るとおよそ20年近くかかるらしいが、もちろん人工的に処理をして最初からこの色を作り出すこともあると言う。
どちらにせよ、地域の重要な意味を持つ寺社という、「この場所に長い年月留まる」ことが約束されている建物に対して、できるだけ長く建物を保護する役割を持った屋根に採用された素材。そして長い時間というものが色の変化としてデザインに取り込まれた素材。
そんなことを思いながらも、あまりの寒さにとりあえずトイレへと駆け込む。一息ついて冷たい水で手を洗っていると、トイレの壁の足元が微妙に地面から持ち上げられ自然光が入ってきているのを発見する。恐らく昨今はこういう場所でも治安の問題を考慮して、できるだけプライバシーを守りながらも、中に誰かいるのかを確認できるようにということもあるのだろうが、明らかにデザインしているというその造詣になんとも心地のよい気分になって手水舎にむかう。
そんな訳で「足元のデザイン」に意識が行くと、この廣田神社は非常に品のよく、かつとてもデザイン性の高いデザインが成されているのに気がつく。社務所にむかう石での舗装面もジグザグとよいリズムを醸し出しながら社務所という機能的な建物の圧力を参道にむき出しにすることなく処理し、そこから拝殿にむかう勾配の緩い階段も手前に石を敷き詰めながら色調はそろえながらも表情を変えるなど、なんとも憎らしい演出をしてくれる。
自然素材を使ったゴツゴツした舗装面からいきなり平ら石を敷き詰めた緊張感のある面へ、そして最後の階段は矩形に切り出された大き目の石、そしてその階段を上りきると最後は砂利面で拝殿には再度表情を変えた石階段と、高さを変える度に足裏に異なる台地との関係を伝える感触のある足元のデザイン。前に前にと主張しすぎず、非常に心地よい距離感を取りながらも、空間とその体験に非常に奥行きのある意味を付加するデザインの在り方。参拝をする前に既に、「朝からいいものを見させてもらった」となんともいえない清清しい気持ちになって拝殿に向かい手をあわせることにする。
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