2015年12月5日土曜日

延慶観(延庆观,yán qìng guān) 1233 ★★


この延慶観(延庆观,yán qìng guān)は儒教、仏教と共に中国三大宗教に数えられる道教の寺院であり、 全真教の創始者である王重陽を祀る寺院であり、北京の白雲閣、四川の常道観と共に中国三大名観の一つとして数えられている。

という導入だけでも、相当に訳が分からない部分が多く出現する。それはまず第一に道教自体が日本人にはそれほど馴染みが無いから。という訳で、この道教から調べていくことにする。

道教(Dàojiào,どうきょう)は、繰り返すが儒教・仏教と共に中国三大宗教の一つである。こうかかれると、「あれ、中国って宗教は認めているのか?」とか、「仏教はインド発祥じゃないか」とか、「儒教って宗教なのか?」などなど突っ込みたくなるが、これらは北周の時期より、これらの儒教・仏教・道教を総じた三教について儒者・僧侶・道士を招きその優越を議論させる慣習が始まり、それぞれの教義が様々な時代において広く中国社会のいたるところに染み渡っているということで使われているようである。

日本人にとっても儒教や仏教は比較的理解されているが、では道教は?というと、漢民族の土着的・伝統的な宗教だという。そしてその中心概念を成す「道(Dào,タオ)」は宇宙の根源的な心理を指すという。その基は老荘思想にあり、老子・荘子を祀り西欧ではタオイズム(Tao-ism)と呼ばれることになる。

陰陽を表わす「太極図」は道教のシンボル的な図でもあり、世界の成り立ちとそのバランスを表現する。これは日本において道教の一要素である陰陽思想や五行思想が特に重視され、そこから陰陽道へと発展を遂げ、平安時代の安倍晴明の様に国家運営の上で重要な役割を果たすようになった。

そんな道教にも他の宗教同様様々な宗派が存在する。それも地域ごとに主だった宗派がことなり河北地方において力を伸ばしたのが太一教・真大道教・全真教の3派であったが、その内の太一教と真大道教はやがて衰え、全真教は七真人と呼ばれる高弟を中心として勢力を伸ばしていく。

逆に江南地域においてはその拠点とする山ごとにことなる勢力が勃興するが徐々に龍虎山を拠点とする正一教が中心的地位を確立していく。

この正一教と全真教は元代末期には既に二大宗派となり、国家が認める正式な道教の宗派としての地位を獲得していく。

その全真教の創始者とされるのが、王重陽(王重阳,Wáng Chóngyáng,おうちょうよう)であり、その彼を祀るのがこの延慶観である。また道教においては出家した道士が共に生活を、その教義を実践する場所を道観(道观,dào guàn,どうかん)と呼び、仏教における寺院に当たる。

それらの道観の中でも極めて重要な意味を持ったものをあわせて中国三大名観と呼び、この延慶観の他に北京の白雲観(白云观)、四川の常道観常道观)がそう称されるという。

30元の入場料を入って中に入ると、人々にとって生活の一部分として溶け込んでいる様子が良く分かるように、数多くの人が線香を立てながら大きな声でお経を上げながら祈りの動きを繰り返している。

中心施設の玉皇閣の地下に行くと、中心に描かれた「太極図」の周りをグルグルと回る人や、地面に頭をつけては立ち上がり、お経を繰りかえるオバサンなど、なかなかの迫力である。鬼気迫るその脇を抜けそそくさを次へと向かうことにする。






玉皇閣





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