2015年11月15日日曜日

「天然コケッコー」 山下敦弘 2007 ★★★★

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スタッフ
監督 山下敦弘
原作 くらもちふさこ
脚本 木田紀生
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キャスト
右田そよ:夏帆
大沢広海:岡田将生
右田一将:佐藤浩市
右田以東子:夏川結衣
田浦美都子:大内まり
松田先生:黒田大輔
田浦重民:廣末哲万
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この作品も原作が漫画の実写化ということであるが、原作を知らないものにとっては非常に新鮮に写った一作である。

しかしそれよりも、ここ最近邦画を立て続けに見ている中で、どうやら縮小社会が叫ばれ久しい折、人口現象に悩む地方自治体が広告代理店と上手いこと手を組み、映画のロケ地として全面的に協力をし、その後ネットなどで積極的にロケ地として使われたことをアピールすることで観光収入へと繋げる露骨な戦略が多く見て取れる気がする。


これも一つ、ステルスマーケティングと括られてしまうのか、それとも地方の魅力を多様なメディアを活用して人々に伝えていく広報活動の一環と捉えるのか評価は分かれるであろうが、そんなことよりも何よりも、ロケでとんでもない田舎として描かれるロケ地の島根県浜田市を中心とした石見地方の風景が美しい。

そして同じくらい、石見弁で自分の事を「わし」と言う主演の夏帆(かほ)が可愛らしい。「どこかで見たことある女優だな・・・」と思って見ているが、途中から完全に彼女の演技にはまってしまい、鑑賞後すぐにネットで主演の女優の名前を調べ、「あぁ、この子が夏帆か・・・」と納得することになる。

その夏帆に負けず劣らず、恋人役の岡田将生(おかだまさき)もまた素晴らしい。ここ数年、様々な作品に引っ張りだこな俳優だなと思っていたが、その片鱗は映画2作目のこの作品で既に圧倒的な演技力。そしてイケメンぶり。今の人気もその演技力に支えられているのだと十分に納得させられる。

クラスには40人ちかいクラスメイトがいて、多くて10クラス以上、少ないところでも3クラスはあるという「学校」のイメージ。人数が大きく「マンモス校」と呼ばれるところほど「都会」だというイメージを持っていた子供時代。学級を構成する人数が足りないというのは、離島の学校などテレビの向こう側のことだと思って育ち、小中高、そして大学と進学するに連れて、その「学校」の枠組みは大きくなり、より多くの人とかかわりを持って成長していく。

そんな当たり前だと思っていた時間の重ね方。その与えられた「枠組み」の中で、自分なりの人間関係を構築し、誰かを好きになったり、誰かと仲良くなったりしながら成長していく。人の多さがイコールで関係性の豊かさ、多様さだと信じきってしまい、その母数が少なければ少ないほど、限られた閉じられた世界であると思ってしまう。


映画で描かれるような明るいところばかりではないが、ニュースで流される暗い事件がそのほとんどだと思う必要もなく、こんなほのぼのとした風景が当たり前の地方のあり方としてしっかりと根付いていくのもまた人口減少の日本の未来の一つの理想風景なのかも知れないと思わせてくれる良い作品である。

何といってもそれを納得させるだけの美しい風景の数々。春に巡った島根の温泉津温泉江津辺りでロケが行われたと知り何だか納得してしまう。またこんな豊かな風景に出会うために山陰に足を運びたいなと思いながら、「あ、すっかり冒頭のステルスマーケティングにやられているのか?」と自問自答しながら画面を閉じることにする。












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