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所在地 茨城県ひたちなか市磯崎町
主祭神 少彦名命
社格 式内社(名神大),旧国幣中社
創建 856
機能 寺社
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海岸沿いを車で走っていると、方向感覚が失われる。その為に参道の向きがてっきり南北だと思っていたが、改めて航空写真で見てみると、西から東へ人工性を現す線が延び、それを受けるように社殿が建ち、その後ろには海が広がっているのが分かる。つまり参道からアプローチをすると社殿の後ろから太陽が昇ってくるという構成である。
朝一番で参拝した大洗磯前神社と深い関係にあり、同じ主祭神を祀り二つの神社で一つの信仰を形成しているという。大洗磯前神社では主祭神に大己貴命 、配祀神(はいししん)に少彦名命を、こちらの酒列磯前神社ではそれが逆になり主祭神に少彦名命 、配祀神に大己貴命を祀っており、二つの神も海から現れたという伝承にそって、海への方向性がとても強い配置となっている。
大洗磯前神社ではアプローチは海から丘へという東から西の方向性であったが、この酒列磯前神社ではそれも逆になり西の森から東の海への方向性となっている。一の鳥居の後ろに控える樹叢はまるでトンネルの様に上部で繋がり、その下にポッカリと暗い口を開いている様である。
歩いてみると良く分かるのだが、300mほどの距離があるこの参道。微妙であるが、上下に起伏しているようである。しかもそれが一定ではなく、一の鳥居からまず微妙に上昇し、その後境内に向かって下っていくというもの。明治神宮に向かう表参道とは逆の構成で、加速度を持って社殿に落ち込んでいく、そんな感覚にとらわれる。
そのトンネルにおばあさんに手を引かれ、足元のおぼつかない赤ん坊がヨチヨチと歩いていく姿を見ると、このような場所が日常の一部としてあるのは、きっと強い感受性を持った子に育つのだろうと勝手に想像を膨らませる。
暗い参道を前方に強く意識を向けられながら進んでいくと、突然左手、つまり北側にポット森が切れて道を共に風景が飛び込んでくる。森という無方向性の場に道という方向性を持った直線が風景を作り出す。その素晴らしい一例。
境内前の二の鳥居前に掲示板が置かれており、その中にデカデカと「きもだめし禁止」の文字。このトンネルと雰囲気を持ってすれば、夜にはさぞや恐ろしい空間へと変貌するのだろうと想像する。近寄って見ると、その張り紙の上には大きな蜘蛛がガラスに張り付いており、如何にもな演出してくれている。
参道を行き着いた先にポッカリと広がる空間。そこで出くわす社殿とその後ろに意識付けられる大海原。そして上に広がる切り取られた空。向き合う自然が強力であればあるほど、またそこから受け取る恩恵が大きければ大きいほど、人々の畏怖の念はまた強まったはずで、そこから自然の力と向き合う場所として作られたこれらの寺社の空間が長い年月をかけてこの地で人々が積み重ねてきた感受性の具現化として、このような素晴らしい空間になっているのだと改めて感心する。
素晴らしい参道と、参道によって生み出された強い方向性に大きな意味と物語を持った素晴らしい神社である。
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