2015年4月18日土曜日

「「悩み」の正体」 香山リカ 2007 ★★

大人になるほど、
仕事の責任が大きくなるほど、
家庭を持ち、家族が増えるほど、
日々の「悩み」は右肩上がりに増えていく。

人と接するから摩擦は起こり、仕事を頑張るからできないことで悩み、そんなことならいっそ、社会から離れ、上昇志向を待たず、できるだけ人との関係を絶って生きていく。そんな日常のほうがどれほど楽か。

なんて考えることも少ない無いが、それでもこの世の中で生きていくためにはどうしても、社会の中でストレスに晒されながらも生きるために、生活するために働いてお金を得ていかなければいけない。

自分一人がこの社会の中で生きていくだけでも、相当なお金がかかるのに、ましてや家族を養っていくとなるとどれだけ頑張って外で働かなければいけなくなるのかは想像に難くない。

そんな社会と、自分の感情との葛藤で生まれるのが悩み。複雑に絡み合い、様々な人たちの参加によって運営される社会であるからこそ、自分一人の思いのままに物事は運ばず、嫌な思いをしながら、不条理なことだと思いながらも、ぐっと心の中に溜め込み顔は笑顔を保たなければいけない。

そんな「悩み」だらけの現代社会。余裕があれば、それを「悩み」と取れることなく、うまく消化できるのかもしれないが、そんな時間的余裕を与えられるわけでもなく、ひたすら「悩み」に負けそうになりながらも、なんとか心を定常状態に保って今日も生きていく。

現代に生きるものとしてその状況から逃げ出すことができないならば、せめてその「悩み」に立ち向かい、分析し理解して消化を良くすること。そんな思いで手に取るが、中には出るわ出るわ、身の回りにもなんだか会ったことがありそうな人たちが。それぞれがそれぞれの「悩み」を抱えて生きている今、どこかの暗い路地裏で喪黒福造に「ドーン!」とされて悩みをリセットしたいと悶々としていそうな同志達。

これを読んでも悩みは解決しないのは、そのタイトルを見れば分かるけど、それよりも他の皆が自分と同じように悩み、もがいている姿を第三者の視点で眺めることで、結局は世阿弥の 「離見の見」 の様に自分を距離を置いて捉えることができる。

以下、本文より一部抜粋
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その「悩み」は悩みとして正当なのだろうか
そもそも、「世話になった祖父が恒例になったことに伴う介護」が、個人だけが抱える、「悩み」にならなければならないと言うこと自体が、おかしいのではないか

本書で取り上げる「悩み」の多くは、恐らく10年前、20年前だったら、「悩み」にならなかったようなもの、あるいは「悩み」になったとしても、ちょっとした生活の知恵や工夫、まわりの人の手助けで重症にならずにクリアできたようなもの

嫌われるのがこわい――人間関係編
/場の空気を読めなかったらどうしよう
優先されるのは、自分の意見や考えを主張することではなく、周囲の空気を読み取り、自分に期待されている役割をこなすことなのだ
自分の気持ちよりもまわりの秩序を大切にする

/他人の失敗が許せない
「いじめ」に加担する子供たちは、「次は自分が標的になるのではないか」という不安やおびえを抱え、「とりあえずこの子をいじめているうちは、自分はいじめられることはない」と目の前の「いけにえ」を激しく攻撃することで、その不安などを隠蔽している場合が多い

/若い人の要領のよさについていけない
自分自身が何かに真剣に取り組み、はっきり評価を下されるのを恐れている場合が多い

/暴力にどう対処したらよいか
日本社会が全体的に他人への寛容な気持ちが薄れ、他者への攻撃的あるいは暴力的態度を強める方向に向かいつつある

「自分がやられるかもしれない」とうい不安にかられ、プライドも恥も捨てて、生き残るために「社内いじめ」に象徴されるような他者への攻撃、さらには暴力に走る人が増え続ければ、この先、社会はどうなるのだろうか

/家族どうしなのに気持ちが通じない
子供にとって、人生の早い時期に一度は、「親は自分の命よりも僕を大切だと思ってくれているんだ」などと実感することが大切だ

/働いても生活できない
廃棄処分になる「無料バーガー」を求めて、夜のファストフード店の前に集合する若者たち
自分も富裕層の一部かもしれないと錯覚するようになる
自己イメージはセレブ、実質下流

/効率がすべてなのか
素直で優秀な人材が見つかるまで、何度でも交換することができます
モノ以下 堂々と「何度でも交換可能」などとうたう
効率や生産性がすべて

/地方にいても展望がない
「どこでもできる」はずのIT産業が振興すればするほど東京への一極集中が進む、という皮肉な現象
/恋愛したいけれど出会いがない
失望されたり軽蔑されたりして傷つくよりも、何も起こらないほうがまだいい。そういう無自覚の計算が、彼の心の中で働いているのだと思う。
恋愛もまた、心の境界を超えて相手が侵入してくる体験に他ならない

/結婚は失敗だったのだろうか
いったん結婚してしまうと、シングル時代に「どんな人でもいいから、誰か私を選んでくれないだろうか」と思ったことなどはすっかり忘れてしまい、「こんな人と結婚するんじゃなかった」と今の状況の不遇にばかり目が行く

人間には、いったんある状況に置かれると、比較する対象が同じ状況の中の人ーそれも自分より幸福そうな人ーだけに限れれ、自分が前にいた状況、他の状況の人たちのことはきれいさっぱり忘れてしまう

/病気になっても医者に診てもらえない
なぜ医学部が人気なのか
「医師免許」と言う資格を取れるから
医学部を卒業することが必須 医学部さえ卒業していれば、合格率は約9割と高い
意思志望者が増加しているのに、地方の医療は衰退し、小児科医や産婦人科医のなり手がいない
小児かも産婦人科 重労働の割りに収入が低い
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■目次  
まえがき
嫌われるのがこわい――人間関係編
/場の空気を読めなかったらどうしよう
/他人の失敗が許せない
/若い人の要領のよさについていけない
/暴力にどう対処したらよいか
/家族どうしなのに気持ちが通じない

無駄が許せない――仕事・経済編  
/忙しく働いていないと不安だ
/働いても生活できない
/効率がすべてなのか
/やりがいを感じられない
/地方にいても展望がない

このままで幸せなのだろうか――恋愛・結婚・子育て編  
/恋愛したいけれど出会いがない
/結婚できないかもしれない
/子どもがいないと不幸せなのか
/親になったが自信がない
/結婚は失敗だったのだろうか

老いたくない、きれいでいたい――身体・健康編  
/自分の顔、からだを変えたい
/健康のために何かしないと不安だ
/老いたくない、病気になりたくない
/病気になっても医者に診てもらえない
/現代の医療に信頼がもてない
 
いつも不安が消えない――こころ編
/自信が持てない
/前向きな気持ちになれない
/気分に浮き沈みがある
/「ありがとう」が息苦しい
/自分は誰にも大切にされていない

 
まじめに生きてきたのに――社会・人生編  
/まじめに生きて損をした
/「便利な世の中」についていけない
/自分は何の役にも立っていない
/おとなになりたくない
/この先、楽しいことはない
 
/あとがき
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