2015年2月20日金曜日

横倉山自然の森博物館 安藤忠雄 1997 ★★★


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所在地  高知県高岡郡越知町
設計   安藤忠雄
竣工   1997
機能   博物館
規模   地上3階
構造   RC造
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朝一番から「海のギャラリー」にて建築の素晴らしさに触れ、今日一日の建築巡礼の幸先の良さを思いながら、滞在数時間となった高知の最南端から北上して向かうのは、高知中部に位置する横倉山。目指したのは高知県内ならどこに行ってもこの名前に出くわすのでは?と思われる牧野富太郎のこの横倉山での業績を記念した博物館。

それほど知られている建築ではないようで、ナビに目的地として入れても上手いこと辿りつけずに移設に電話して、細い山道を入っていく行き方を聞き、山の中腹に突然ポッカリと姿を現す建物に到着する。

「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎は高知県出身の植物学者。江戸後期から昭和まで生き抜いた博士は発見した新種の植物も多数にのぼり、豊かな自然の中を歩きまわり人生を過ごした人物である。

設計はあの安藤忠雄氏。1941年生まれということなので、主要作品をその年齢と重ねてみると

1976年(35歳) 住吉の長屋
1983年(42歳) 六甲の集合住宅Ⅰ
1984年(43歳) TIME'S
1986年(45歳) 風の教会(六甲の教会)
1988年(47歳) 水の教会
1989年(48歳) 光の教会
1989年(48歳) コレッツィオーネ
1991年(50歳) 本福寺水御堂
1992年(51歳) ベネッセハウス ミュージアム
1994年(53歳) 大阪府立近つ飛鳥博物館
1994年(53歳) 京都府立陶板名画の庭
1997年(56歳) 横倉山自然の森博物館
2000年(59歳) 淡路夢舞台
2001年(60歳) 大阪府立狭山池博物館
2001年(60歳) 司馬遼太郎記念館
2002年(61歳) 国際子ども図書館
2004年(63歳) 地中美術館
2004年(63歳) 県立ぐんま昆虫の森
2006年(65歳) 表参道ヒルズ
2008年(67歳) 東京大学大学院情報学環 福武ホール
2008年(67歳) JR竜王駅
2008年(67歳) 東京地下鉄副都心線・東京急行電鉄東横線渋谷駅
2009年(68歳) プンタ・デラ・ドガーナ再生計画

となり、中期の作品の一つだと見て取れる。

駐車場の脇に建っているトイレに入ると、何気ないところであるが、天井の脇にトップライトが設けられ気持ちの良い自然光が降り注ぐ。そんな安藤建築らしい導入を経て建物本体にアプローチする。

山に囲まれているためか、これといってメインになるファサードは見当たらず、長い壁に設けられたスロープを上っていく。徐々に周囲の木の枝の高さになったころに壁の一番先までたどり着き、壁に沿って折り返す。浮遊感を演出するような手すりのディテールと、徐々に上がる視線から山の裾野に広がる街の様子が見えてくる。

右手に設けられた開口部から先ほど登ってきたスロープの上から覗くような形になり、左手には二階部分からアプローチする形の建築と、その下に広がる水盤の関係性をちらりと見ながら到着する円筒形のエントランス。円が矩形にぶつかるところは全てスリットが設けられ、ここから取り込まれる光が後ほど内部に場所性を与えてくれることを理解する。

基本的な幾何学を自然の地形の中にそっと置きながら建築がなかった時には気がつくことのなかった自然の美しさ、風景の切り取り方を作り出し、豊かな場を作り出しながら、同時に自然との関係性を作り出す建築の素晴らしさを学ぶことができる安藤建築の教科書の様な空間。

水盤、スロープ、大階段、薄い手すり、コンクリート打ちっぱなしと木仕上げの内部空間、スリットど取り込まれる自然光、梁のフレームで切り取られる風景など、安藤建築の常套句が見事に使いこなされて余裕を感じる設計。事務所にも十分にノウハウが蓄積された時期に設計された作品なのだろうと勝手な想像を広げながらも牧野富太郎も愛した雄大な自然の姿を楽しむこととする。

































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