恐らく杭州を訪れる中国人が一番訪れる観光地といえば、西湖よりもこのお寺なのではないだろうか。市街地から離れ山の中に位置しているのにも関わらず、そう思えるほど多くの人で賑わっている禅宗の臨済宗の寺院である。
霊隠寺(灵隐寺、れいいんじ、Língyǐn Sì)
中国禅宗五山十刹の一つに数えられ、中国の中でも非常に有名な寺の一つである。五山(ござん)とは何かといえば、禅宗の臨済宗において最高の格式を持つ5つの寺院を指し、インドの天竺五精舎(てんじくごしょうじゃ)にならい中国においても南宋時代に南宋の第4代皇帝である寧宗(宁宗、ねいそう、níng zōng)が建立した5つの寺を指す。
その5つの寺とは
第一位 径山寺(径山興聖万寿禅寺、杭州)
第二位 霊隠寺(北山景徳霊隠禅寺、杭州)
第三位 天童景徳寺(太白山天童景徳禅寺、寧波)
第五位 阿育王寺(阿育王山広利禅寺、寧波)
を指すという。いろいろなホームページでどの寺院が入るか違っているが、一番この組み合わせと順序が正しいようである。
同じように日本でも鎌倉時代と室町時代に鎌倉と京都の臨済宗の寺院の中で同じ格付けが行われており、どこでもやはり格付けによって参拝客が増減に影響するなどの影響があったのだろうと想像する。
では十刹(じっさつ)といえば、こちらも寺名と寺号などで表記が混乱しているが整理すると下記の様になるようである。
第一位 中天竺寺(天寧万寿永祚寺、杭州)
第二位 万寿寺(道上山護聖万寿禅寺、湖州)
第三位 霊谷寺(蒋山太平護国禅寺、建康)
第四位 報恩寺(報恩光孝禅寺、蘇州)
第五位 雪竇寺(資聖禅寺、明州)
第六位 江心寺(龍翔禅寺、温州)
第七位 雪峰寺(崇聖禅寺、福州)
第八位 双林寺(宝林禅寺、浙江金華) 廃寺
第九位 雲岩寺(虎丘山雲岩禅寺、蘇州)
第十位 国清寺(天台山教忠禅寺、浙江天台)
念のために中国のホームページはこの様になっているようである。
もちろん日本でもそれに倣うように、関東十刹、京都十刹が定められている。
さて霊隠寺(灵隐寺、れいいんじ)に戻ると、ここは東晋(とうしん、Dōngjìn、317年 - 420年)時代の326年に慧理(えり、huì. lǐ)によって開かれた禅寺である。年間300万人もの参拝客を集めるという。伊勢神宮が式年遷宮のあった2013年の参拝者が過去最多の1420万人だというから、やはりかなりの数の人だということが分かる。これは明治神宮に初詣で参拝する人の数とほぼ同じである。
最盛期である10世紀ごろには3000人以上もの僧がいたと言われ、現在でも霊隠寺(灵隐寺、れいいんじ)を中心として周囲にいくつもの寺院が取り囲む形で一大宗教エリアを形成している。
そんな訳でこのエリアに入るためにまず入口で入場料を払わされ、さらに進んでいった先の霊隠寺の入口でも入場料を取られる二重課金システムを採用している。
入口から続く道の左手には「霊隠飛来峰」を呼ばれる数々の石仏が立ち並ぶ。この「飛来峰」とは前出の慧理が「この山はインドから飛来してきた」言った、石灰石でできいる特徴的な小高い山のことである。その彼方此方に石仏が彫られところどころにある洞窟内部にも石仏が彫られている。
その中でも一番有名なのが山の中腹に掘られている弥勒菩薩像だという。どう考えても、布袋様の様であるが、こちらではこれが弥勒菩薩像とされているようである。文化が流れていく過程で何かのボタンのかけ違いで我々の常識ができているのだと思っていると、「ふくよかな像ね。あなたもこれなら代わりのバイトができるね」となんだか嬉しそうに嫌味を言ってくる妻の言葉から逃げるように先を進む。
霊隠寺に入ると、入口で線香を渡される。5つの束になっており、5つの神様に祈りを捧げるながら参拝をするようで、その順序も決まっているようである。山の中腹に鎮座する寺院なので必然的に参拝ルートも山を登るように階段をあがっていくことになり、結構足に疲労を感じながら一番上の巨大な大雄宝殿まで参拝する。その中には高さ25mほどという仏像が鎮座しており、このために建物が大きくなったのかと納得。
人ごみから逃げるようにして隣の寺院へ向かうことにする。
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