2014年12月17日水曜日

ブルジュ・アル・アラブ Burj Al Arab Atkins 1999 ★


恐らく「世界で一番有名なホテル」として名前が挙がるとしたらこのホテルではないだろうかと思われるブルジュ・アル・アラブ(Burj Al Arab)。新興都市ドバイの経済成長のアイコンとして1999年の以降何度もメディアを賑わした7つ星ホテル。

一体何の基準で「7つ星」になるのかと調べてもなかなか明確な基準が出てこないが、まぁ兎にも角にも贅を尽くしたホテルだということであろう。

建物はペルシャ湾に面するビーチから300mほど沖合いに作られた人工島に建ち、そこまではホテル専用の橋によってアプローチをする形になっている。ホテルの高さは328mで、当時としては世界最高の高さを誇るホテルとしても有名になったが、周囲に比較する建物が無いので、それほど高い建物だとは思えないのが不思議である。

「設計は誰だっけ?」と同行人と話していると、「フォスターじゃなかった?」と答えが返ってきたので、「確かにありうるな・・・」と納得したが、その日の夜に食事をした協力会社の代表の人から聞くと、イギリスの組織設計のアトキンス(Atkins)だという。

やっと橋の入口に着くと多くの観光客らしき人たちが写真を撮っている。厭な予感がするなと思っていたら案の定セキュリティと思われる人に止められて、「宿泊客じゃなければここから先は入れない」と言う。「中のバーかレストランでお茶をしたいんだ」というと、「それなら予約が無ければ入れられない」というので、「では、ここで予約をとりたい」というと、「一人ミニマル・チャージが250AED」だという。

「何もかもがお金か・・・」とげんなりするが、ここまで来て内部を見ないのも癪なので、それでよいから予約をとりたいというと、「クレジットカードの番号を控えさせてもらう」と。上階のレストランは予約で一杯だから、空いているのは中華レストランだといわれ、しょうがないのでそこでいいから予約を取ってもらうことに。

待つこと暫く、やっと中と確認が取れたというので、ゲートを開けてもらい、ビーチに寝そべる観光客達を眺めながら、ペルシャ湾の水が以外に青いということに驚きながら、到着するロビーは、中に入ると左右にカラフルな魚たちが泳ぐ大きな壁面水槽の脇にエスカレーターが設置され、中央には段々状になったところに人形と噴水が設置されており、「これほど高級ホテルのロビーでこれだけ品疎な空間か?」といぶかしんで上を見上げると、背の高いアトリウムが北側のガラス面から白い布を通して光を取り入れ、三角形の吹き抜けに面した二面に面する各客室へと光を届けている設計になっているようである。

それにしても内部の設計もそして内装も、とても7つ星と銘打つようなクオリティには思えず、ロビーで大声で話しながら記念写真を取っている中国人の客の様に、どこかで見たことのあるデジャブ感は拭えない。

胡散臭さを感じながらエレベーターで上階へ。その先に廊下となっており、中国の地方のホテルに併設されているような安っぽくはあるがうっているものは、ビカビカのアクセサリーという如何にも成金趣味のショップが軒を並べ、その先に小さな受付。そしてその受付の脇からやっと外の海が眺められる構成。

ここまで建築空間としての豊かさは皆無。恐らくロビーや公共空間など、敷地との関係性でどの様な豊かな空間を作り出すのかが目的とされたのではなく、LEEDのプラチナムを取るにはどのような設計が必要かと考えるように、7つ星として認定されるにはどのような設計が必要か、世界の中で贅沢なホテルといわれるためには何が必要か、という視点で設計がされ、全体のないバラバラな局所のみの設計に終始した印象は否めない。

そんな訳で予約したレストランにどの様にたどり着けばいいのかを知るようなサイン計画がされている訳でもなく、建築的にどちらにいけば公共空間があるのかが分かるような明確な空間構成がされている訳でもないので、しょうがなく受付で予約したレストランの名前を告げると、エレベーターで下の階に行けと。

エレベーターホールもなんだかげんなりするような内装で、そこで一緒になった中国人客の話している言葉を聞いていた連れの上海人は、「恐らく福州人だろう」と言う。なるほどと、なんだか納得する。

エレベーターを待つ間に、ホテルのスタッフに「全部で何部屋あるのか?」と聞くと、「部屋じゃなく、全てスイートだ」と答えられ、サービスという概念よりも、ここに泊まるステイタスだけを求めてくるテイストの無い客相手にしているホテルマンらしい対応にまたまたげんなり。

中華レストランに着くと、窓辺の席に通され、「1ドリンクで2ディッシュか、2ドリンクで1ディッシュかを選べ」と言われ、お昼を取ることなく歩きとおしてきたので、喉の渇きを潤すために少々くつろぐことにする。

クライアントからの連絡を待ちながらも携帯の充電が乏しくなってきた連れが、「iPhone5の充電器を貸して欲しい」とリクエストするがそのウエイターは「了解」と言ったっきり全然戻ってこなく、別のスタッフに頼むと携帯をどこかへ持っていってしまい、その後何の報告も無い。こんな感じで様々なところにサービスとして疑問符がつく部分が余りに多く、とてもじゃないがリラックスして雰囲気を楽しむような場所ではないようである。

中国人と思われるスタッフに聞いたところ、今では宿泊客の多くが中国人観光客になっており、それに合わせたレストランなどに仕様を変えているという。

これ以上ここにいても、何かしら得るものは無いだろうとの判断で、そそくさとドリンクと軽食を平らげ、費用対効果をどう考えているのかと思われる金額を支払い外へ。ロビーでタクシーを拾おうとすると、例の高級レクサスタクシーしかないといわれ、「それなら外まで歩いて普通のタクシーを拾うよ」と先ほど歩いた橋を再度歩いていくことにする。

砂漠の中に生まれた蜃気楼のような都市に、世界一のアイコンを何としてでも冠する為に生み出されたキメラの様なホテル。「グランド・ブダペスト・ホテル」の様なホテルマンの愛の感じられるホテルとは対極に位置するホテルであろうと思いながら橋を渡りきる。















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