2014年12月1日月曜日

「鉄道員(ぽっぽや)」 降旗康男 1999 ★★

高倉健が亡くなったというニュースが流れ、周囲の中国人が「大変な俳優を失ったね。」と声をかけてくることに驚いた。なんでも海外文化が解禁になった時に初めて持ち込まれた映画が高倉健主演の映画であり、同年代の中国人は殆どが彼の映画を見たことがあるという。世界的な映画監督のジャン・イーモウや中国の新聞各社がコメントを出したように、中国にとっても高倉健と言う俳優は、時代を代表する一人出会ったということが良く理解される。

その割りに、高倉健の映画を何本見たことがあるかと考え直すが、ほとんど見たことがないことに気がつく。亡くなることがきっかけで出演作を見ようと思うのもまた、一つのきっかけだろうということで、何本か高倉映画を観てみることにする。

その一本目となったのがこの映画。当時飛ぶ鳥を落とす勢いであった広末涼子が高倉健と共演をすることでテレビでも随分プロモーションがされていたので、すっかり観た気になってしまっていたが、よくよく考えると観ていなかったようで、改めて冬の北海道の寒さを想像しながらじっくり「不器用さ」を観ることにする。

何かの本で、南極観察鯛に参加していた人に、「どんな人間が一番強いですか?」という質問に、「アメリカ人の様に屈強な肉体を持っている人間でもなく、ただただ毎日外に嵐が吹いていようが雨で何日も閉じ込められようが、同じ時間に起きて、歯を磨き、顔を洗って食事を取り、同じペースで一日を繰り返すことができる人間。それが一番持ちこたえるのです」という答えが返ってきたという話を見たことがあるが、まさにそんな愚直な男の姿を見せてくれる高倉健。

自分の信念に従い、愚直に真っ直ぐに、決して派手ではないが毎日毎日、同じことを繰り返すことで社会に対して奉仕する、そんな不器用な男の姿。

自由主義経済が闊歩する現代社会においては、採算が取れないならば閉鎖して当然とばっさりと切り捨てられてしまうような地方のローカル線。かつての賑わいを失い、出て行くことも無く取り残されたように暮らす人々。その人たちの生活を支えるために存続するローカル線。そしてそこで職務を全うする男。

雪積もるプラットフォームで赤い旗を振る姿はやはり日本だけでなく、世界が見惚れた名優の絵になる姿だと納得する作品である。
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スタッフ
監督 降旗康男
原作 浅田次郎
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キャスト
佐藤乙松  高倉健
杉浦仙次  小林稔侍
佐藤静枝  大竹しのぶ
佐藤雪子  広末涼子
杉浦明子  田中好子 
吉岡敏行  安藤政信 
吉岡肇   志村けん  
集配人   坂東英二
牛乳配達  きたろう
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