2014年6月4日水曜日

ドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale) 814 ★★★★★


--------------------------------------------------------
所在地  ヴェネツィア(Venezia)
竣工   814
機能   宮殿
--------------------------------------------------------
ベニスで一番美しい建物といえばまず第一に挙げたくなるのがこのドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale)。カナル・グランデからラグーンにでて左手に見えてくるのがこの都市の顔であるサン・マルコ広場。

この都市の海の玄関口を示す二本の柱。その右手に横長に延びる3層構成の美しい建物。上部の壁面が中間部の細い柱に重力を伝え、そして下層部のどっしりした太い柱へと力が流れていくこの世を支配する物理の法則を視覚化したかのような見事なヴェネツィアン・ゴシック。

サン・マルコ寺院にへばり付くかのように配置され、かたや海の玄関の見張り役のような位置を持つこの建物は、別名「The Doges' Palace」とも呼ばれ、「Doge」は「ドージェ」と発音され、ヴェネツィア共和国の総督という意味であり、共和国の一番の権力者の館として利用されて来たという。

元々の建物は8世紀に建てられたが、大規模な改修が施されたのが14世紀-16世紀の間で、様々な建築家の手によって設計が重ねられてきたが、尖頭アーチを連ねたアーケードが上部のロッジアを支え、下層部空間を都市に開放し、市民が日陰で憩える回廊空間を提供する、見事なゴシック様式の建物としてこの街の顔の役割を果たしている。

カ・ドーロ(Ca' d'Oro)の設計で知られる、ジョヴァンニ・ボンと彼の子バルトロメオ・ボンもまたこのドゥカーレ宮殿の改修に関わり、ゴシック建築の傑作を作り出すのに寄与したと言われる。

なんといっても素晴らしいのは、サン・マルコ広場からやってきて建物の角に差し掛かると、下部において視界が抜けて先の海が見えてくる扱い。二階部分は抜けは少ないもののやはり向こうが感じ取れ、上部になると壁面として完全に風景が遮断される。

イタロ・カルヴィーノが新たな千年紀の為に残そうとした価値の一つ「軽さ  Lightness」。このドゥカーレ宮殿の足元から見えるラグーンの風景を見ていると、重力に支配される人類にとってやはり「軽さ」がどれだけの価値を持ちえるのかを教えてくれる建物である。












0 件のコメント:

コメントを投稿