2014年3月10日月曜日

「日本人はこれから何を買うのか? 「超おひとりさま社会」の消費と行動」 三浦展 2013 ★

先日、昔からお世話になっており、世界的エンジニリング会社であるArupの役員をやっている友人が北京に来た時に、「軽く飲まないか」と誘われて出て行った席で、「日本はこれから何を売るんだ?SONYは一体何を世界に売るんだ?」と質問された。

そんな会話を思い出しながら読むことにしたこの一冊。「日本人が何を買うのか?」は必然的に日本のマーケットの潮流を決定し、そこに視線を向けた日本の企業の主力商品を決定させる。しかし、それがイコールで海外でも受け入れられるかといったらそれはまた別の話。

その時に迫られる決断。自分の会社の主力マーケットはどこか?日本の市場がそれほどの魅力を持ちうるのか?それはそれぞれの会社の規模と、今後の成長戦略によって決定される。もし、多くの会社が、日本のマーケットに魅力を感じないと判断し、日本のマーケットの需要を顧みないようになったらどうなるか?

それでも必ず、そのマーケットで利益をあげる会社も残るので、必ずある程度の需要と共有のバランスは維持されるのだろうが、そんな二極化の世界での微妙なバランスを感じながら読んでいくことにする。

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第1章 老若男女すべて「おひとりさま」
/2035年、主流派おひとりさま
「おひとりさま」
上野千鶴子「おひとりさまの老後」
「アラフォー」の未婚女性
「負け犬の遠吠え」

/中高年のおひとりさまが増える
増えるのは45歳以上

/東京などの大都市圏で高齢の一人暮らしが増える
/増加する未婚・親元暮らし
/ライフスタイル、消費行動が変わる
一人暮らしが消費の中心となる
親と同居している40代、50代の未婚者が増える
個人化である。孤独化ともいえる。
一人で暮らし、一人でご飯を食べる人
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30代半ば。自分の周りでも当然ながら「おひとりさま」である友人がいる。実家に帰れば、家の近所でも、40代50代で親元暮らしの未婚者は驚くほど多くいる。その上を見れば、一人暮らしの高齢者家庭も数多くあるという。「婚活」などとラッピングされてはいるが、結婚できない、結婚しない人というのは、どの時代でも一定数いたわけで、それが核家族の増加によって高齢者の「おひとりさま」として目に映りやすくなってきた現代。

結局はマーケティングからの視点で現代社会を分析し、今の世の中「何が売れるか?」を代理店やメーカーに指南する立場で書かれている面もあるので、その切り口はある種ドライにも映る。

「おひとりさま」が社会の主流から外れたものでなくなり、社会を構成する大きな勢力となった時に、日本のマーケットはどう変わるのか?そんな問題提起の章である。
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第2章 おひとりさま消費の現状
(3)若年男性(34歳以下)
/かまない、果物を食べない
若い人ほど固形の物を食べるより、液体を飲む傾向が強まっている。これは食生活の下流化傾向ともいえるものである
下流的な若者ほどご飯と味噌汁とおかずと言った一汁三菜的な食事をせず、丼物、ラーメンなど食器が一つで済む食事をする傾向が強い
果物を食べない
皮をむいたりして子供に与えることを面倒くさがるケース
生ゴミも増えるし、片付けも面倒なのであろう。
ジュースなどの飲料を買っておけば、子供が勝手に飲むので親は簡単である。

/間食の主食化、外食・コンビニ依存度は86%
外食・コンビニへの依存度はますます高まっていくだろう

4 若年女性(34歳以下)
/下着から歯科医へ
歯の強制やホワイトニング
下着などの見えないところにお金をかけるより、人から見られる歯の矯正やホワイトニングにお金をかけるようになった
就職、転職、恋愛などにおいて、外見が重要だと考える若者が男女共に増えているためであろう

5 ミドル男性(35-59歳)
/快眠思考
不眠症
仕事のストレス、24時間型の生活、運動不足、パソコン作業から来る疲労
眠りが浅いことで悩む人


老若男女に共通のニーズに答える商品は、巨大なヒット商品になる可能性がある ユニクロ
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マーケティングに説得力を持たせるには、このような統計データを持ち出すしかない訳で、データがあるから正しいのだという流れには少々辟易するが、若年男性で描かれる、「とにかく面倒くさいのが嫌だから、少しでも楽に食事を済ませようとする下流な食生活の指摘は誰でも耳が痛いはずである。「楽」なことが、何よりも上位に来てしまう生活の価値観。これはすでに小さなころからの教育でしか養われないのであろう。

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第3章 おひとりさまは何が欲しいのか
/高齢男性も今後はコンビニ、外食に依存か?
/宅配ビジネスの拡大
/地域に友人を作れるか
地域の中に友人が増えていく可能性は低い
地縁ではなく「知縁」
仕事や趣味などを通じて親しい友人
>若い人でもそう

/オーダーメイド賃貸とセルフリノベーション
入居者と一緒にリノベーションをする時代
DIY住宅
メゾン青樹では住民同士のリビングも

/新しい公共交通が必要
/生涯学習は知的ケア
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ここで想定される高齢者というのは、団塊世代を想定されているわけで、必然的に十分蓄えがあり、なおかつ生活をしていくのに問題のない年金が受給されるために、他のどの世代よりも豊かに、旅行し娯楽を楽しむことができる。しかしこの世代の高齢者はあくまでも特殊な高齢者であり、今後何十年後に高齢者となる世代とは設定が違っていることは頭の中に入れておかなければいけない。

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第4章 コミュニティという商品を買う時代
/買物難民の増加
①宅配サービス(商品を顧客に届ける)
②移動販売(商品を積載した店舗ごと顧客まで移動する)
③店への移動手段の提供
④便利な店舗立地
コンビに 会社帰りの人々が主要な客 比較的駅の近くとか、人通りの多い道沿い

/通信販売か宅配か
セブンイレブンの「コムス」
セブンらくらくお届け便

/買物をサポートする
消費者が商店街で購入した商品を自宅に配達するサービス

/新しい外食が必要
おひとりさまは、宅配弁当やコンビに弁当などと近隣の安い居酒屋を使い分けながら食生活を楽しもうとする

/「コムビニ」が必要 CSVとしてのCVS
「コムビニ」 コミュニティ・コンビニエンス・ストア

/コムビニのイメージ
医療福祉関係
薬剤師
飲食店併設

/シェアハウスを拠点としたサービス
サービスの便利や
家電業界もサービスを売る時代になるはず

/住宅地を都市化する
地域の仕事をシェア

/制約社員が増えると待ちは面白くなる
昼間から町をうろうろする人が増えた
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こういう具体的な提案につなげていけるのはこの著者の素晴らしいところだと毎回思わずにいられない。恐らくこういう社会の現象を分析し、その背景となる問題を見つけ、それに対して社会がどのように変わっていくべきか、その前に社会がどうあるのが今後の日本にとって良いのかを考えることは、かなり広い視点を持たなければいけない。

そしてダメだしだけの理論だけで終わらせずに、具体的なフィードバックとしての提案につなげるためには、何かを作り出さす想像力と専門知識が必要とされる。そしてその立場に一番適切な職業なのは建築家であると思われる。

可能な方法としては、各自治体に地域の現状を把握し、その将来を自分の利益からではなく、純粋に地域社会の視点から考えられる建築家を地域建築家として任命し、5年くらいの期間を与えつつ、歴代の担当者と協議して5年、20年、50年くらいのスパンで、どのような地域社会になることが、この地にとってベストであるかをビジョンとして出していくこと。そして個別の問題を大きな視点を持って解決していくこと。

そういう地域のマスター・アーキテクト制度ができれば、ここで提案されているような、「コムビニ」のようなこと。さまざまな地域で発生している新しいシェア・ハウスなどもより効率的に機能していくのではと想像を膨らませる。

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目次
第1章 老若男女すべて「おひとりさま」
/2035年、主流派おひとりさま
/中高年のおひとりさまが増える
/東京などの大都市圏で高齢の一人暮らしが増える
/50歳以上の未婚・死別・離別が2510万人になる
/増加する未婚・親元暮らし
/ライフスタイル、消費行動が変わる

第2章 おひとりさま消費の現状
/おひとりさまたちの年収
(1)シニア男性(60歳以上)
/若者化する高齢者男性
/食の洋風化・スナック化
/クルマ、美容、スポーツの消費も伸びている
(2)ソニア女性(60歳以上)
/自動車、スポーツ、インターネットなどアクティブ化
/調理食品は少ない
(3)若年男性(34歳以下)
/自動車から自転車へ
/料理は増えたが基本は外食と調理食品
/かまない、果物を食べない
/間食の主食化、外食・コンビニ依存度は86%

・事例1 料理器具の人気
・事例2 男性快眠市場

4 若年女性(34歳以下)
/仕送り、寄付、信仰費が伸びる
/下着から歯科医へ
/晩酌は増加

5 ミドル男性(35-59歳)
/お部屋志向
/快眠思考

6 ミドル女性(35-59歳)
/墓石の準備が始まる
/健康志向
/者よりサービス
/老若男女に共通のニーズに応える
/サービスをワンストップでトータルに提供する必要


第3章 おひとりさまは何が欲しいのか
/おひとりさま社会は生活全体に「ケア」が必要
/高齢男性も今後はコンビニ、外食に依存か?
/女性は職の安全性を求める
/食の安全が町の魅力になる
/宅配ビジネスの拡大
/おふくろの味は不滅
/かかりつけの医者が欲しい
/マッサージも物からサービスへ
/地域に友人を作れるか
/身近な知人同士のちょっとしたお祝い
/おひとりさまも持ち家の時代
/中古住宅リノベーション
/おひとりさまだからこそ、住宅に性能を求める
/オーダーメイド賃貸とセルフリノベーション
/新しい公共交通が必要
/生涯学習は知的ケア
/働き方を変えれば、まだ働ける
/「節約社員」をケアする仕組みが必要
事例3 集合銃多君尾コミュニティ形成支援事業
事例4 血行き密着型百貨店
事例5 団地を建替えずにコミュニティ活性化

第4章 コミュニティという商品を買う時代
/買物難民の増加
/通信販売か宅配か
/買物をサポートする
/一人で食べるのはわびしい
/新しい外食が必要
/「コムビニ」が必要 CSVとしてのCVS
/コムビニのイメージ
/シェアハウスを拠点としたサービス
/住宅地を都市化する
/脱サラリーマン化で地位に活気
/制約社員が増えると待ちは面白くなる
/コミュニティ自体が商品となる
/コミュニティリビング

・事例6 団地の高齢者の買い物サポート
・事例7 副収入付きシェアハウス
・事例8 オーダーメイド賃貸
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