2013年11月15日金曜日

コンサート 「アンドレアス・ヘフリガー (Andreas Haefliger) ピアノ(piano) 」 NCPA 2013 ★★

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プログラム
Sonata, Op.14, No.2 Beethoven
Four pieces from Six Encores Luciano Berio
Fantasy in C major, Op.17 Schumann
Sonata, Op. 109 Beethoven
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金曜日の夜。「いけるかな・・・?」と期待していたが、やはり遅れてしまった。というのも、この秋は世界中でレクチャーに飛び回っているパートナーが久々に北京に戻ってきているということもあり、また来週は新しく始まるロシアでの大きなコンペのキックオフ・ミーティングの為に二人のパートナーが揃って出てしまうので、皆が揃う金曜日は暫く無いだろうということで、急遽開かれることになったハッピー・アワー。

ここ数週間の間にオフィスに入ってきた新しいフルタイムとインターンの紹介を行い、またオフィスを離れることになったスタッフからの挨拶などをして、その後ビールを飲みながら軽いつまみを食べて皆好き勝手に時間を過ごすという時間であるが、今週は新しいフルタイム二人と一人のインターンが新しいメンバーと言うことでそれぞれに挨拶をする。

その間にも時間が気になり、「ああ、既に演奏が始まってしまったな・・・」と思いながら隣でスタッフに向けて話をしているパートナーの言葉に耳を傾ける。それにしても、こうして世界からスタッフがやってきて、世界のコンペで戦える機会があるというのは、そのパートナーが言葉にしていたように、大きな変化がオフィスの中で起こっているのだと思わずにいられない。

その後三々五々となったのを見計らい、さっさと荷物と取ってオフィスを後にし、スクーターを飛ばして向かうオペラハウス。受付で手荷物検査をしている時に、「既に始まっているけど・・・」と言われながらも小走りで音楽ホールへ。

「外で待たされるだろうな・・・」と思っていたら、ホールから何人かの人が出てくるところ。既に第1幕は終わってしまったようである。やはり平日の夜19;30開幕のコンサートに余裕を持って会場に到着するというのは、毎日が不確定な時間を過ごす建築家には到底無理な要求だと改めて理解する。

「逆にこんなストレスを感じるくらいなら、もう二度と平日のチケットなんか買うものか・・・」とがっくり肩を落としながらも自分の席を探すと、そこには女性が座っている。「おや?」と思って聞いてみると、「今日は席が開いているので皆好き勝手に移動しているんだ」という。

「そうなのか」と思いながら、今日のコンサートがとても良いと進めてくれたメンター夫妻はどこにいるだろうとキョロキョロすると、随分下のほうでこちらに向かって手を振っているメンターの品の良いふさふさの白髪を発見する。

お医者さんをされている日本人の奥さんが探しに来てくれて、「今到着したところですか?」というので、「建築家ですので・・・」と暗い返事を返して前半の感想を聞くと、「なかなかいいですよ」と。

開いていた隣の席を取っておいてくれたようで、ピアノのすぐ近くの席に移動すると、さっそくメンターが「今日もまた数公演のチケットを買ったから一緒にどう?」と誘ってくる。

オペラ、バレエ、コンサート、ダンス。これら舞台芸術に関して思い切って造形を深め、自分で楽しめるレベルまでなりたいということで、この二年間は全てメンターの言うことをできるだけ聞くことに決めてしまったので、「ハイハイ、どのプログラムでしょうか?平日以外なら全部行きますよ」と完全に受身の体勢。

メンターは「バレエは一番知的要素が高いけど、コンサートは比較的楽しみやすいからいい」と前置きをしながら、年末までの行われる中からオーケストラとストリング・カルテット(String Quartet 弦楽四重奏)の公演のチケットを買ったという。

「ストリング・カルテット(String Quartet 弦楽四重奏)は凄く知的な音楽で、簡単ではないけど建築的だからぜひ試す価値があるよ」と熱く薦めて来るメンターの横で、「ストリング・カルテットは難しいからなぁ。私はあまり好きじゃないですけどねぇ。なんていうか全てが完璧すぎてね」と奥さん。

「なら彼女のチケットをもらって、一緒に行こうか」とメンターの駆けあいと聞きながら、「なんて二人とも知的レベルが高くていらっしゃるんだろう・・・」とこれから歩む長い道のりを思いながらも、見つけた新しい楽しみが、純粋な楽しみのまま付き合っていけるといいなと思いながら、断る理由も見つからないので、「明日ダンスを見に来るので、そのときに妻の分と合わせてかっておきます」と、強烈に薦めて来るメンターに伝えておく。

そんなことをしていると、拍手の中、本日の主役が休憩を終えて舞台へ。

アンドレアス・ヘフリガー(Andreas Haefliger)は、ドイツ生まれのスイスのピアニストであり、お父さんもエルンスト・ヘフリガーというなんでも有名な音楽家らしい。アメリカ、ニューヨークの有名な音楽学校であるジュリアード音楽院を卒業した有能なピアニストだという。

そして本日のプログラムはBeethoven、 Luciano Berio、Schumann。流石にベートーヴェンとシューマンは聞いたことがあるが、Luciano Berio?と思って調べてみると、ルチアーノ・ベリオ(Luciano Berio)は1925年生まれのイタリアの作曲家ということで、比較的近い時代の音楽家のようである。ヘフリガー同様にジュリアード学院教授も務めた人だという。

そんな訳で結構ワイルドな風貌のヘフリガーを近くに眺めながら後半の演奏のスタート。

やはり途中から来るコンサートは時間が十分でなく、身体が空間に馴染む前に終わってしまい、最初はざわざわしながらも、徐々に音楽家の作り出す空間と観客が一体化するのには、みっちり2時間は必要なのだと理解する。

そのためにアルファ波にすっかりやられてウツラウツラとしていると、3曲目が終わってしまったようですぐに最後の曲になってしまう。ここで神経が覚醒したようで集中して聞けたのだが、これはなかなか良かったと思う。

プログラムにはベートーヴェンだと書いてあるが、演奏後にメンターが言うには、「彼はプログラムをえらく変えちゃったね。最後の曲はベートーヴェンじゃなかったね」と何の曲だったか奥さんも分かったらしいが、こちらはズブの初心者なので自分が気に入ったかどうかが分かっただけでまずは良しとする。

拍手に誘われてアンコールを1曲披露して受け取った花束を最前列の女性に渡して返っていくヘフリガー。「アンコールで何度も出てきては何曲も弾く場合とそうじゃない場合あるんですね?」と隣の奥さんに聞くと、「うん、気分みたいです」と教えてくれる。

できるだけこの二人から学べることは学びたいと思いながら、食事がまだだという二人を残してひとりスクーターで夜の北京を駆け抜けて、明日のダンスへの期待値を上げながら家路に着くことにする。








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