2012年11月8日木曜日

観世音寺 746 ★★★


大宰府政庁跡から少し離れた場所にポツネンと建っている観世音寺は、奈良時代に建立された天台宗の古刹。

ついつい見逃してしまいそうな細い並木道の参道を入り、生い茂る木々のトンネルを抜けて門を過ぎると、ぽっかりと空間が広がり、小高くなった地盤面の演出も手伝い、正面の講堂が奥行きをもってその姿を見せてくれる。

中心軸に沿って、講堂の前に灯篭が一つ立っているので、講堂への視線が遮られるのが不思議な気分になるが、左に構える金堂(阿弥陀堂)の効果もあって、かつてあった右側の五重の塔を頭の中で再現し、法隆寺並みとはいかないが、それでも十分荘厳な求心性を持った空間に思いを馳せる。

講堂の後ろに回れば、かつての僧坊の跡地があったりと、やはり奈良・平安の面影を残すように、全体的にゆったりとした平面計画がおおらかな空間をつくりだす。

右の観世音寺宝蔵の裏手には、菜の花とコスモス畑が広がり、地元の人が気ままに土手に座っては時間を過ごす姿を見ていると、やはり都市でもなく、奥地でもない規模の街に残る古刹の風景こそ、本来の日本の風景なんだとなんだか納得する。










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