2012年9月4日火曜日

堕ちるのに時間はいらない

圧倒的弱者である幼児を相手にニュースにとても嫌な気分になる。

宮崎勤の事件で見せられた、ワンルームに溢れる欲望の嵐。一見雑然としたその風景に秘められた欲望の秩序。VHSという淘汰された媒体の助けを借りることでこの世に現れた欲望の風景。

かつてはエロ本を一冊購入するにもそれなりの出費が必要だったが、現在ではモニターの前から動かずとも、ワン・クリックだけで無限に自分の欲望を満たすものが飛び込んでくる。

それは誰にも制御されることなく、インターネットによって加速させられる欲望空間。

ゆとり世代やゆとり以後という安易な言葉ではくくれない、誰も制御してくれない肥大化するだけの欲望に、どう折衷していくか教えられることなくその身体を晒されてきた世代。

たとえ同居していても、ワンルームという境界の裏で、モニターというブラックボックスに入れられて、インターネットのクラウドの先に隠さた、親からも見えない世界で密かに、そして確実に大きくなる欲望たち。

社会との接点は煩わしいものではある反面、人間一人では保つことができない理性を繋ぐか細い線として機能する。しかし、無意識のうちに現代人はその糸を一つまた一つと切ってしまう。そして現実と自分の妄想の中の欲望が乖離していくのに気づかないまま、誰も注意をできることなく、現実の世界を朦朧と漂うことになる。


「堕ちるのに時間はいらない」


酒鬼薔薇聖斗事件で社会が感じだ背筋がゾッとする理解不能な猟奇的感覚。しかし今度は違う。これはインターネットと個人主義によってもたらされた、誰にでも、そしてそれはあっという間に訪れうる欲望の穴。クラウドの先から、モニターには納まりきらず、果たしてワンルームから飛び出し街に溢れる欲望空間。

日の光に当たるべきでない蠢くような腫れ物が、一気に外に解放される。
それはあまりに自由であまりに危険。

ぜひ、容疑者の部屋とそのモニターの中に隠された欲望を社会に曝して欲しいと願う。そこに広がるのは恐らく整然とした白く漂白されたような空間だろうと創造する。

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