2012年8月23日木曜日

インターン文化

インターンシップで我々の事務所に来ている学生が常に10人以上いる。

その国籍はと言うと、今在籍中のインターンだけでも、中国はもちろんのこと、タイ、スペイン、イタリア、レバノン、スウェーデン、香港、アイルランドと多国籍に渡る。

夏休みの期間だけに、毎週の様に新しいインターンとして誰かが入ってきては、3.4ヶ月ほど、事務所で建築設計事務所の生活とはどのようなものか、MADではどのように設計を進めていくのか、を実際に仕事を通して学んでそれぞれの国に帰っていく。

そんな訳で、毎月一度は金曜の夕方からハッピー・アワーと銘打ってオフィス内でビールを飲みながらカジュアルな会を催して、その中で新しく来た所員やインターンが挨拶をし、また去っていく人も同じように挨拶をする。

まだ二十歳そこそこの若さだと思うが、皆恥ずかしがったりしながらも、ちゃんと30人からの人の前でしっかりと英語で挨拶をしていくのを見ると、自分がその年頃にできていたかな?と思わずにいられない。

そんなインターン達を見ていると、来たばかりのときは英語もたどたどしかった子でも、インターンが終わる頃になるとかなり会話も上達してるし、CADや3Dも使えるようになっていく姿を見ると、こういう経験は学校ではなかなかできないだろうと感じ、なによりも、これだけ多国籍の同世代で同じく建築を目指す友人を作って、その後の勉強を続けると言うのは、何にも変えられない経験だろうと思う。

それぞれのプロジェクトに配置されるインターンなので、会話を交わす機会は人によってバラバラになってしまうが、できるだけ様々なステージのプロジェクトを体験できる様に考慮してあげて、何か一つでもいいので、より建築を好きになれるものをここから持ち帰って欲しいと伝える。

インターンにはインターンのコミュニティがあるようで、昼時はインターン同士でテーブルを囲み、その後はインターン同士で散歩に出て行く。そんな姿を目にすると、自分もそんなインターンを経験していたら、また違う道を歩んでいたのかと想像する。

そんなインターン達を見ていても、その中に日本からのインターンの姿が一人もいないことに少しの悲しみを覚える。

大学生時代に、長い人では半年間、違う国に行き建築の実務を学ぶ。

恐らく日本の大学のカリキュラムではそれだけの長い時間を研究室や大学から離れることは、日本の建築村の中での大学という更に小さな村の中ではマイナスの要素でしかないのだろうか。担当教授の覚えよろしくして、常に彼の視界の中に姿を置いておけば、安定した就職先への推薦ももらえやすいだろう。

この不況下で不安定極まりないアトリエ系設計事務所に就職を望む生徒も数少ない中、皆が競って目指す先は安定した大手設計組織。日本の優良企業として一般的な採用活動をするそれらの企業を目指す学生は、必然的な長期に渡る無用ともいえる就職活動を強いられる。その就職戦線から半年近く脱落するのはある意味彼らにとってはドロップアウトを意味するのだろうか。

そしてもう一つの大きな理由は英語という言語の壁。しかし公平にこれからの建築の流れを見ていくと、学生のときにその壁を取っ払ってしまうほうが、よっぽどその後の人生における「就職活動」になるのだと思わずにいられない。

とにもかくにも、なんだか楽しそうなインターン達の中に、当たり前のように日本からの学生がいて、当たり前の様にその学生とも英語か中国語かで会話をしているようになる日が来れば、日本も真の意味での国際化に近づけたということか。

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