2012年5月5日土曜日

オルドス 午前8時


竣工時に行くことができなかったオルドス博物館にできるだけ早いうちに足を運ぼうと思っていた。

外部の3次曲面の仕上がりや、内部のGRG壁面の問題点や、各部の詳細の納まりを実際見て触って、オフィスの現段階での設計および現場監理の力を把握するのと、施工会社の能力を把握する必要があるから、少し落ち着いた夏前にいければとパートナーと話していた。

そんな週末前の金曜にオフィスに行くと、プロジェクト・アーキテクトの中国人がトコトコやってきて、お願いがあると。現在建物は完成し現在内部の展示の施工が進んでいるのだが、展覧会が開始するまでに竣工後発覚した建築的な問題点を解決しているという。

ちなみに内部の展示は内モンゴルということもあり、近くで恐竜の化石が発掘できて、大規模な恐竜の化石の展示や、原始時代の生活の様子などを見せ、NYの自然史博物館の様な感じの展示で、なかなか迫力満点だ。

問題というのは、外部の曲面が切り取られ入り口になる部分で、二つの異なるシステムの曲面が出会う部分の処理だが、多くの人が通り、近づき、触れることができる部分だけに、頭をぶつけた時や手を触れたときの安全性と同時に、挙動の異なる二つの面の接点をどう処理するかということ。設計時に解決しきれておらず、最後の最後まで良い解決方法を見つけることができるずに現在に至っており、施主であるオルドス市計画局と、外装施工会社と設計であるMADの3者で頭を抱えながら最後の解決法を見つけようと躍起になっているという。

明日は現場にて、外装施工会社担当者と現場の職人さんと一緒になって、最新の解決法について設計会社としての意向を伝える必要があるという。3次曲面の建物だけに、写真や電話ではどうもニュアンスが伝わらず、結局は現場で眼で見て,Face to Faceのコミュニケーションが必要になってくる。

「そりゃそうだ」なんて言っていると、その担当プロジェクト・アーキテクトだが、明日はもう一つ現場が動いているプロジェクトの打ち合わせにどうしても出なければ行けないので、オルドスに行けないと言う。「じゃあYosukeが行きたいと言っていたから、彼に頼めばいい」とパートナーのダン・チュンに言われたという。

雲行きの怪しくなってきた内容と、これはかなりの急展開だなと頭の中でいくつかのシナリオを想定し、「一人でか?」と聞くと、「大丈夫、大丈夫」と。

なかなかハードルを上げてくるな、と思っているとすでにチケットも取ってあり、朝の6時に空港に行けば、外装施工会社の担当者も同じ飛行機だからそこで合流して、オルドス空港についたら、その担当者が車を手配していてそれで一緒に現場に行ってほしいと。

現場に着いたら、サンプルを貼ってある処理の仕方を確認し、こちらの意向に沿うように解決して、最終的な処理の仕方の確認とサンプルの再作成をしてもらいたいという。帰りの飛行機は昼の15時だと早すぎるからその次は夜の21時しかないから、いろいろ内部を見て回る時間も十分あると、すでに外堀は完全に埋められている様子。

ちょっと勘は取り戻しつつあるといいながらも、田舎で周り100%中国人の環境で、会ったことのない担当者との一人出張か・・・といくつか起こりうる問題パターンを洗い出しつつ、まぁどうにかなりそうだし、面白くなりそうだと覚悟を決める。

そんな訳で土曜日の朝5時前に起床し、まだ暗い空の下空港へと向かい、それでも混んでいる空港の中、辿り着いたゲートで前日渡された外装会社担当者の情報に電話をかけると、「どうも、どうも」とやってくる担当者。事情は分かっているようで、一応こちらの中国語が理解できるか?と確認する。

そんな訳で、機上で約一時間。辿り着く内モンゴル自治区オルドス市空港。昨今の経済発展で街のいたるところで成金バブルの香りが漂うような街である。

タクシーに相乗りで行くのだが、途中デコボコの未舗装の道をジャンプするように進み、やっと辿り着いた新都市・康巴什地区。初めてここに訪れた6年前には何もなかったはずだが、今はすっかり立派な新都心部の様相。

そこに見えてくるオルドス博物館。この風景にこのスケール感。久々に感じる建築を見たときにゾワゾワくる感じに、この風景にこのスケール感は間違っていなかったと確信。

時計を見ると、まだ午前8時。

長く暑い一日になりそうだと思いながら、入り口への階段を上りだす。







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