2012年3月13日火曜日

管理建築士講習


足の裏の米粒に手が届いたと思っていたら、早3年。

今度は一級建築士事務所の運営に必要な専任の管理建築士になるために必須の講習会を受ける時期になる。管理建築士というのは、建築士事務所の運営に関して技術的および経営的にも助言をする立場にあるが、一般的に事務所の開設者がそれを兼ねることが多い。

一級建築士全員が管理建築士というわけでもないので、必然的に一級建築士の定期講習よりもより受講者が少なく、つまりはその頻度も低くなる。

そしてその講習だが、どの機関でも勝手に行っていいものではもちろん無く、指定の登録講習機関によって運営されるので、それぞれの機関がそれぞれのスケジュールで日本の各地にて行うものである。

北京に渡る前のタイミングで受けられる講習のタイミングは・・・・と探していると、合致するのは総合資格学院の大阪での講習のみ・・・・。悔しいながら申し込みをし、本来ならば発生することの無い交通費だからと、再度高速バスでの往復を選択し、深夜の新宿より出発。

この管理建築士の講習だが、姉歯事件で失われた建築業界への信頼を取り戻すべく改定された建築士法の一環である訳だから、主な講習内容は改正された建築士法および建築基準法、またその他関係法令などと、建築士事務所の業務に関する内容が主になる。

しかしその内容ときたら、とにかく大変・・・。もう引退した方がいいのでは・・・と思われるヨボヨボのおじいちゃんが杖をつきながらも、マークシートがなんたるかを教えてもらって修了考査を受けている姿がこの講習、ひいては、姉歯事件が建築業界に与えた影響を物語っていると思わずにいられない。

午前に10分の休憩を挟んで1時間20分のコマが2コマと、お昼を挟んで再度午後に10分の休憩を挟んで1時間20分のコマが2コマ。そしてその後に1時間のマークシートにての修了考査。すべての講義を聴講することと、修了考査にて必要基準を超えることが講習修了の基準となる。

修了考査は講習で使用したテキストを調べながら回答していいので、講習をしっかり聞いてもらえれば難しいことではないという説明はあるが、計222ページのテキストに必死にアンダーラインを引きながらの聴講となるのだが、襲ってくる高速バスでの疲労と眠気との闘いになる。

管理建築士に求められるのは、時代に即した建築士事務所の運営の眼差し。設計だけでなく、企画やコンサルティング、またはコストダウン能力が設計者を選らぶ要因としてデザイン力を上回っているとデータを示される。

また経理と財務の違いをはじめ、貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・キャッシュ・フロー計算書(C/S)に代表される財務諸表の見方から事務所の健全な運営体制への気配り。

各プロジェクトに対して適切な人材が配されているか、またそのスタッフの職歴や資格および資格取得が可能かの学歴および職歴の把握とそのデータ化などの人材管理を含めた人事の役割。

罰則が強化されたことで、各建築士にも300万もの罰金が科せられたり、法人として一億の罰金が科せられる可能性も出てきたことより、そのリスクに備えた保険への加入など、法的責任をどう負うことかについての危機管理意識。

紛争がこじれた場合にお世話になる訴訟や民事裁判では、各自どのような特徴があり、期間がどのくらいかかって、どのような結果がでるのか。その為の法的管理。

工事費ベースから床面積ベースに移行した設計料の略算式の使い方から、契約についての定義と揉め事になった前例からどのような点に気を付けるかを踏まえての法的契約書の作成方法。

いつどの段階で、どのような業務が発生し、どの割合の設計料が支払われるか、そんなこともデザイン例と一緒にホームページなどに明記しろと簡単に言われるが、それならばホームページの作り方も覚えないといけないことに・・・・

あげだしたらきりがなく、それこそ一つ一つ確実にこなしていけば簡単に数年はかかってしまうし、それほどの社会的責任と大きなリスクを背負ってでも足を進めていかなければいけないのか・・・と決心を迫られる内容満載。

雑誌を賑わす秀逸なデザインで紙面を飾る建築家達も、同じだけの社会的責任をその両肩に背負いながら、零れ落ちそうになる涙をこらえてマークシートを塗りつぶし、塗りつぶされた数だけの決意を胸に、管理建築士としての見えないバッチをくくりつけたのかと思うと、心がいっぱいにならずにいられない。

そんなことを思いながら修了考査を受けていたのは自分だけかと思いながら、今度は東京行の夜行バスを待つ時間を如何に過ごすか考えながら、せっかくだからと今宮戎神社まで足を延ばしてみる大坂の夜。

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