2011年9月28日水曜日

「背の眼 上・下」 道尾秀介 ★★★












ここ数年の文学賞を総ナメにしている勢いのある作家で、「向日葵の咲かない夏」もそこそこ楽しめたので、最近作が文庫化される前に以前の作品を読んでおこうと手にした第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。

自分自身と言える作家が主人公で、福島の田舎で遭遇した不思議な現象を心霊研究をしている大学時代の友人に相談に行き、そのアシスタントと3人で事件の謎を解いていく、という分かりやすいストーリー。

天狗のルーツは、古代中国で彗星を見た人が、それを尾だと思い、天を駆ける狐、天の狗そして天狗へと変化し、それが日本古来の山岳信仰に組み込まれ、役小角(えんのおづぬ)を開祖とする修験道に仏教が融合し、天台宗、真言宗の山岳仏教へと発展し、その山伏の姿がいつしか天狗のイメージへと定着していく。

という話はなかなか面白かった。

「在るものを見るのではなく、見えるものを在るとする」という心霊の本質をつく言葉にふむふむとし、駱駝の背中に藁を乗せ、その一本を乗せると背中がポキリと折れる最後の一本があるという「ラストストロー現象」も、ほぉーっと聞いてしまう。

そんなわけで、流石に物語を読ませる安定感は感じられ安心して読めるが、大きな期待にこたえるほどではなかったのが率直な感想か。

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