2010年5月6日木曜日

「翳りゆく夏」 赤井三尋 講談社文庫 2006 ★★★






















手がけている熊本の住宅の為に、御親戚が営まれていたという材木店を訪ねに、片道3時間かけて千葉の銚子市まで出かける。待ち受けてくれたのは「矍鑠とした老人」。

「矍鑠」と書いて「かくしゃく」

数千人の応募者の中で、二人だけ読みを書くことが出来たという、全国紙東西新聞の内定者の女学生。その彼女が20年前に起こった横須賀での嬰児誘拐及び病院への身代金要求犯人の娘だったことが週刊誌によって暴かれる。直感像資質の持ち主でもある彼女を何としても入社にこぎ付けようとする人事部と自ら戦線に立つ社長。そして事件の真相を再度洗い出す窓際記者。

ミステリーの定石。

「犯人は登場人物の中にいる。そして一番意外な形で。」


きっちりと登場人物像を描いてくれ、なおかつスピード感にも問題ない、2003年の第49回江戸川乱歩賞受賞作。久々に一気に読みきれる上質のミステリーというところか。

ひとつづつ掛違えられたボタンが、最後にぴったりと揃う種明かし。
ニッポン放送・オールナイトのデスクに届けられる、身代金受け渡し指示。
報道協定やラジオ局の裏側を知り尽くした作者ならではのトリック。

出てくる人物が皆チャーミングでとても良い読み物なのだが、後一つのスパイスが効いていれば・・・
中の上というところでしょうか。

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