2010年5月20日木曜日

「裸のサルの幸福論」 デズモンド・モリス新潮新書 2005 ★★★






















マリス博士の奇想天外さも好きだが、やはりモリス博士のサルは抜群だ。

「人間は霊長類の中で唯一、体毛のない「裸のサル」である。」

という仮定をもとに、動物行動学から、現代には一体どれだけの裸のサルがいて、どんな教育様式や、生殖行動を行うかという分析によって世界を読み解くという前作「裸のサル」に続き、今度はそのサルどもにとって、幸福とは何か?

なぜコカインは麻薬中毒者を幸せにするのか?

なぜ自爆テロを行う人は、人々を粉々に吹き飛ばすことが自爆者の至上の幸福感をもたらすのか?

という、様々なジャンルの幸福について、人類の発展の歴史を紐解き、分かりやすく解説する幸福論。

まずは、「満足」と「幸福」の違いから始まり、満足とは人生がうまくいっている時の気分で、幸福は人生が突然好転した時に我々が体験する感情であると明確な定義。それは、人生の「劇的」な「変化」によってもたらされるから、長続きしないのが「幸福」。残念。


原始社会の「狩猟」にルーツを見出す「標的」と「競争」、そして獲物を分け合う「協力」の幸福。

「恋に落ちる」という人間特有の行動と、子供が自立する前に次の子供を生むことができることによる長い養育期間から発生した、拡大した家族の形式。

どんな種でも再生産の決定的瞬間にオーガズムという褒章がなければ存続できないが、他のサルの場合はオスに限定された性的オーガズムが、裸のサルにはメスにも与えられることによって、意識の深層に閉じ込められた排卵期という遺伝子の企みにまんまとはまり、カップルを形成するプロセスに導く官能の幸福。

生まれた当時、泣くことしかできない赤ん坊が3-4ヶ月で獲得する笑いの幸福。


様々なサルにとって、幸福とは様々な形をとって現れるが、ただ一つ共通するのは、

「幸福とは一つの態度である。」

幸福に翻弄されるあまたのサルたちを乗せて、今日も地球は楽しげに回っていということか。

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