2009年10月11日日曜日

「グリズリー」 笹本稜平 2004 ★★★

非常に壮大なハードボイルド小説。ただただストイックに自分の信念に正直に、誰にも分かられることなくとも、その孤独の日々の中で自分を刃物の様に研ぎ澄ましていく。そんな男達が山を通してつながっていく。

アメリカを相手にたった一人で戦いを挑む元エリート自衛官である折本敬一。テロリスト「グリズリー」と名付けられながらも、自分の信念に従いアメリカ合衆国副大統領の姪であるフィービ・クロフォードに近づいていく。

そしてもう一人の主人公は元北海道警SAT狙撃班で将来有望なスナイパーだった城戸口道彦 。その時代に札幌市の消費者金融を襲った二人組みの一人を射殺するが、その事件の影響で一線から身を引き、今では地元の山で山岳救助隊員を務める。

そんな二人が雪山の中で出会う。そして折本がかつての事件の生き残りの一人であったことを知る。

その折本が今でも一人で実行に移そうとしているある計画。それはこの国の安全を根底から覆すことになる真実を表の世界にあぶりだすこと。

相変わらずにあまりも不器用で、それでいてかっこいい男の姿を書く作者。一人で何ができるのかを嘆くのではなく、たった一人でも真剣に世界を相手に立ち向かおうとする姿。そこに国境などは存在しないのだろうとは思いながらも、それでも現実には、同じ苦しみを理解する為には、 言葉を理解しなければ本当に同じ想像力を共有することは難しいのだろうと、母国語ではない言語を使い生活する日常の中で思いながらページを閉じることにする。

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