2009年8月5日水曜日

「龍の契り」 服部真澄 2001 ★★★★

香港がイギリスから中国へ返還される1997年前夜。世界の一大経済拠点として西洋と東洋の中継地として成長した香港をみすみす中国に渡すのを快く思わなかった英国の中で、「香港を中国に返還しなくて良い」という密約が交わされていたとする秘密文書が見つかったとしたら?

そんな時代の雰囲気を呼んだ国際エンターテイメント小説。著者はこれがデビュー作という服部真澄。それにも関わらず第114回の直木賞候補までなったというからその後の活躍が納得というもの。

時代を遡ると中国からイギリスに香港が譲渡されたのが1842年。戦後の中国の発展により当時の書記長である鄧小平とイギリスのサッチャー首相との交渉により、段階的に香港を中国に返還していくことが決められ、その期日として定められたのが1997年7月1日。

香港におけるイギリス統治の象徴的な存在でもある上海香港銀行(HSBC)。

アメリカ・ハリウッド
イギリス・ロンドン
香港
アメリカ・ワシントン
中国・北京

スポーツヴィジョンという動きの中でも情報を的確に捉える視覚機能の訓練や、速読によって情報を切捨てす術を得た日本の外交官沢木喬が何十にも重なる陰謀と策略の網の中を掻い潜っていく。

その姿を見ると、やはりこれだけ世界が小さくなった現代において、能力のある人間はどんどん世界を駆けめぐりながら日常を過ごしていくのだろうと思いながらページを閉じる。
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東洋の富の一大拠点・香港。その返還を前に、永い眠りから覚醒するかのように突如浮上した、返還に関する謎の密約。いつ、誰が締結し、誰を利するものなのか―。全焼したロンドンのスタジオから忽然と消えた機密文書をめぐる英・中・米・日の熾烈な争奪戦が、世紀末の北京でついにクライマックスを迎えるとき、いにしえの密約文書は果たして誰の手に落ち、何を開示するのか。
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