2009年7月15日水曜日

「建築の四層構造 サステイナブル・デザインをめぐる思考」 難波和彦 ★★★



『箱の家』で知られる建築家;難波和彦。

東京大学の建築学部を卒業して、師である教授の研究室でモダニズムをしっかりと学び、クリストファー・アレグザンダーという建築理論のバックグラウンドとなる対象をしっかりと視界に収め、東京大学というアカデミズムに根を張りながら、決してぶれることのない建築思想と建築活動を行き来し、世間でどれだけ建築家がもてはやされ様とも、決してその立ち位置を間違えることなく、ただ一心に建築に進化の方向があるのなら、1mmでもいいから自分がその推進に力になりたいと言わんばかりの良心の建築家像。建築家と学者の二つのイメージを正面きって受け止める数少ない現代の建築家。

その人が人生をかけて考えてきたこと、そして「環境」というあたらなるパラダイムに入らなければいけない現代の建築に対して、どのような方向性をつけることができるか、技術の力を信じ、建築家が技術者であることを体現し、新しい社会要請に対して、新しい建築の技術の表現を模索する。様々な考えの上澄みを吸い取ったような良質本。

その中でも強烈に作者のキャラクターを現しているのが

『エイリアン』と『タイムレス』

H.R.ギーガーによって描かれた新たなる未来のイメージ。リドリー・スコットによって映像化されたバイオ・メカニズムの未来。かつて想像したピカピカ光る金属製の未来のイメージが、スターウォーズの登場によって、未来もまた汚れることを目の当たりにした人類に対して、更にバイオ・メカニズムの未来は、ハードエッジでなくドロドロとし、曖昧であるというまったく新しい未来の形を見せつける。

こういう洞察はなかなかできるものではないが、さすがは難波先生!と言わざるを得ない。

エイリアンはドロドロした未来だと指摘された後の世界を創造する我々は、一体どんな未来を頭に描きながら明日の建築を設計するのだろうか。ワクワクせずにはいられない。
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建築の四層構造 サステイナブル・デザインをめぐる思考
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